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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/29 07:42:18

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それは…

ハナオトにもお宝だったのかもしれないが。

俺には、かなりの…

相当な、お宝映像だった。


「すげーだろ。」

ハナオトがそう言ったのは…

SHE'S-HE'Sのライヴ映像で。

もちろん…世には出ていないやつで。

いつだかの周年パーティーの物は俺もこっそり持っているが…

これは…去年の夏に行われた、特別なイベントだったらしい。

その頃の俺は…

朝子と婚約解消があったり。

全然気持ちに余裕がなかった頃だ。


「おふくろ、家では全然こんな風に歌う人間には見えねーんだけどな。」

「…カッコいいよな。」

「でも、やっぱなんてったって早乙女さんだ。」

「え…」

「俺が師と仰いでる人なんだ。」

「……」

「ほんと、あの人の弾き方って言うか、独特のスタイル…たまんねーんだよな。」

胸が…高鳴った。

ギタリストを生業としているハナオトから…

そんな風に言われるなんて。

早乙女さんは…本当に、ホンモノなんだな…って。

俺が思うのもおかしいけど…

でも…

それで、母さんと結ばれなかった意味がそこにあると思えて。

全てに納得がいく。


ハナオトがサイモンバーガーという、昔からあるバーガーショップに電話をして。

20分後に、ハンバーガーやコーラ、ポテトにソーセージ…

胸焼けしそうな量のジャンクフーズが届いた。


最初は、ソファーで横になってたハナオトも。

「ここ。このソロがかっちょいいんだよな~。」

…早乙女さんのソロが来ると、起き上ってリズムを取る。

俺は床に座って…ソファーを背もたれに。というパターンを試してみてるが…

これは、なかなかの物だった。

時々、クッションを置いて横になってもみたが…

ハナオトじゃないが、早乙女さんのソロになると…つい起き上ってしまった。


「…うちのバンドも観るか?」

SHE'S-HE'Sが終わった所で、ハナオトが言った。

「……」

ソーセージに食いついた状態で聞かれて、その動きを止めたまま…何も答えずにいると。

「紅美が歌うとこ、観てーだろ。かっこ良かったぜ?」

ハナオトは、俺の返事も待たずにリモコンを操作した。


…こいつ。

終わらせてやれって言ったクセに。

俺には…終わらせないつもりか?

それとも、終わったのを知ってて…

拷問のつもりか?


だが、紅美の歌う姿を観たいのは事実。

それを見たからと言って、感情に変化があるとは思えない。

…もう、俺は終わらせた。


「…あれ、いい匂いがすると思ったら…」

沙都が二階から降りて来て。

「あっ、しかも僕らのじゃん。見よう見よう。」

沙都は、ハナオトが斜めになっている所にくっついて座って。

「おまっ…広い方に座れよ。」

ハナオトに邪魔者扱いされてる。

「いいじゃん。この角度で見たいんだよ。」

…結局…

ハナオト。

床に座った俺。

沙都。

そんな感じで…映像鑑賞、再度スタート。


『Six,Five,Four,Three,Two,One,all engine running,Lift off!!』

その瞬間、幕が落ちて…

「……」

とりあえず…

出だしで鳥肌を立てた。

ハナオトと紅美と沙都。

三人が、飛び跳ねた。

「うはーっ!!俺達、かっけーな!!」

「ほんと!!」

俺の背後で、二人がハイタッチを交わす。

…それは認める。

自画自賛も仕方がない。

…俺は…

画面に釘付けになった。

紅美が…

すごく、すごく…楽しそうで。

本当に、イキイキしていて。

それは、俺と一緒にいる時に見せる顔とは…

全然、違って見えた。


無言でDANGERの映像を見てると。

「うわー!!僕、我慢できないや!!弾いていい!?」

沙都がそう言って…ベースを持って来た。

「あ、ずりーな、おまえ。」

そう言って…ハナオトも、ギターを手にした。

…俺を挟んで、二人が足でリズムを取ながら楽器を弾く。

それは…今までの俺の生活には皆無な事だったし、想像もしなかった事で…

正直…

刺激された。

俺が二階堂の仕事をするのと同じだとは思う。

こいつらのこれは、仕事だ。

だけど…この楽しそうな目は何だ?


DANGERのステージは三曲ほどだった。

だが、仮にもプロの演奏を生で聴けたわけで…

俺は二人に拍手をした。


それから、コーラはビールになって。

沙都が。

「海くん、さくらばあちゃんが歌ったの、観たい?」

と…

「え?このライヴで?」

「うん。」

「観たい。」

「じゃ…特別版を出さなきゃねー。」

沙都がそう言ってディスクを違う物に変えると。

ハナオトは大きく欠伸をしながら立ちあがってリビングを出て行った。

「…見ないのかな?」

俺が沙都に聞くと。

「ノンくん、これ見ると泣いちゃうんだよ。」

「え?なんで?」

「おばあちゃん子だから。」

「……」

最初は意味が分からなかったが…


「……」

「海くんまで泣くとは思わなかったなあ…」

俺は、その映像を見て、泣いた。

そんな俺を見た沙都も、少し泣いた。

これは…ハナオトが泣いても仕方がない。

きっと、号泣レベルに違いない。

さくらさんの…愛に触れて、涙が止まらない。


泣いたついでに、トイレに行こうとリビングを出ると。

「…何やってんだ?」

バスルームの隣にある納戸に、ハナオトがいた。

「あ?ああ…アイロンかけてた。」

「……」

ハナオトが手にしてるシャツは…俺の。

きれいにアイロンがけされた物が二枚、ハンガーにかけてある。

おまけに、洗濯物も取り込んで…きれいに畳んであった。

「…主婦か。」

ニコリともせず言ってしまうと。

「無駄に出来ちまうのが悲しい。」

ハナオトも笑わずに答えた。

あんな…圧巻なステージを見せられた後で…これ。

俺は、こいつのギャップにハマりつつある。


俺に足りないものは、友達とライバル。

…ライバルは、もういたとして…

友達…。


年齢なんて関係ない。


俺は…

ハナオトと友達になりたい。

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