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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/28 21:57:01

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「海さんのアパート、精神衛生上良くないから引き払っちゃおうか。」

仕事の後で落ち合ったさくらさんは、なぜか一旦俺の部屋に来てそう言って。

「さ、荷物まとめて。」

「…え?」

「早く早く。」

「……」

俺は何も分からないまま、もともと少ない荷物をキャリーケースに詰め込んで。

「じゃ、後は富樫さんにどうにかしてもらっておきましょ。」

「え?あ…あの…」

「さ、乗った乗った。」

なぜか俺の車を、さくらさんが運転して。

連れて行かれた先には、ハナオトと沙都がいて。

「いただきまーす。」

沙都が作ったと思われる料理を前に、四人で座って。

だけど…食べてるのはさくらさんだけ。

この…気まずさ。


だが、そろりそろりと言葉を交わすようになり。

その間に俺は現場の連絡が入って。

「じゃ、荷物は部屋に入れておくねー。」

さくらさんにそう言って見送られて…一旦本部に向かった。

…まだ、何か…騙されたような気分のままだが…


「よ、元気か?」

本部にたどりつくと。

「親父?」

「痩せたようだが、元気そうではあるな。」

「……」

本部はいつもと変わりなく、人がウロウロしてはいるが…

現場に出る前の慌ただしさは…ない。


「これはいったい?」

「現場って言った方が早く来るかなと思って。」

「お…」

おい。

何なんだ。

「普通に呼んでくれても、早く来るのに。」

親父は俺の肩に手を掛けて。

「飲みに行こうか。」

笑った。

「…え?」

「こういうのも、いいだろ。」

「…ああ…」

親父と…飲みに行く。

初めてだ。


どうしても、現場の後は…翌日に備えて早々に帰って眠る。

親父は、若い頃は沙耶さん万里さんとで飲みに出かけたりしてたって言うが…

俺には、そういう…同期的な人間はいないからな…

歳が近いと言っても、富樫も志麻も、俺にとっては部下だし。

飲みに行く相手と言うと…

わっちゃん。

年上だけど、今や義理の弟。

わっちゃんとは飲みに行ってたけど、友達みたいに…ってわけでもなかったな。

…今思うと、紅美の相談ばかりか。


「いつこっちに?」

「今朝。先代の所に行ってた。」

「母さんは?」

「施設に泣く泣く置いて来た。」

「ははっ。一緒に来れば良かったのに。」

「ま、今夜は男同士で。」

近くに二階堂御用達のバーがあるが、俺達みたいに上の者が行くと周りに気を使われる。

俺は少し離れたバーに親父と向かった。


「先代の所、おまえも行ったんだろ?」

飲み始めてすぐ、親父が言った。

「ああ…」

…ばあさん、何か話したかな。

「海がいい顔をして会いに来てくれたって喜んでたぞ。」

「…心配かけてたからな…」


一般人を死なせてしまった後…

同じ経験をしたじいさんに会いたくなって。

時間が空くたびに…会いに行った。

もう、寝たきりで…何も分からないじいさんに。

俺は、何を求めていたんだろう。


「しかし驚いたな。」

親父は小さく笑って。

「行ったら…先代が『環、何か仕事をよこせ』って言い始めて。」

「えっ…」

「何もしゃべれないほどだったのに、いきなり仕事をよこせって。そりゃないよな。」

親父は、ずっと思い出し笑いのように小さく笑う。

「…じいさん…どうして急に?」

「戻ったか?」

「ああ。」

「会ったんだろ?」

「…さくらさん?」

親父はグラスを揺らしながら。

「ああ。」

頷いた。

「…すごく…なんて言うか…」

「不思議な人だろ。」

「親父は知ってるのか?あの人が二階堂にいた頃の事。」

俺の問いかけに、親父は少し遠い目をした。

「実は…陸坊の結婚式の時に…」

親父にとっては義弟の陸兄。

だけど、元々護衛をしていた身である親父は、さすがに陸兄を呼び捨てにはできないようで。

今も、浩也さん達と同じように『陸坊』と呼ぶ。

「すごく、見覚えがあるんだけど…誰だか分からない。ずっとそう思って見てたら『初めまして』って挨拶されて。他人の空似かって思う事にしたんだが…」

グラスの中の氷が、音を立てて回った。

「その日は現場に出てた万里と沙耶が、親族写真を見て言ったんだ。『これ、さくらちゃん?』って。」

「…なんで親父だけ分からなかったんだろう?」

「ずっと分からなかった。二人が『アメリカ研修に行って、戻って来なかったさくらちゃんだよ』って言っても、何のことかさっぱりだったな。」

「浩也さんには聞かなかったんだ?」

「ちょっと聞ける雰囲気じゃなかったって言うか…どっちにしろ、その『さくらちゃん』の今が幸せなら、過去を知る必要はないかなと思って。」

親父の言う事はもっともだった。

二階堂は、事件性がない限り、一般人の私生活には深入りしない。


「だが…」

「だが?」

「今朝、先代がピンピンしてるのを見て、どうして快復を?って話してると…」

親父は、俺のこめかみに触れて。

「先代に、こうされてさ。」

「え?」

「そして、こうされて…」

「……これって。」

親父の指は、俺のこめかみから少し移動して。

「すごいよな。」

そう言って、笑った。

「記憶を…消されてたって事?」

「ああ。」

「で…じいさんに、それを解かれたって事?」

「そうなるかな。」

「…でも、じいさんが寝たきりになってたのは、記憶の消去のせいじゃないんだろ?」

「記憶の消去が使われてたのは、俺が15になるまでの二階堂にあった事で、それ以降は完全に封印された。」

「じゃあ…なぜ…」

「ま、先代の話はいいとして…俺の記憶がどうして消されたか、知りたくないか?」

親父は、少しワクワクするような口調で、そう言った。

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コメント2

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6577301・07/28

    スズさん
    私も知りたいヽ(*´∀`)ノ
    実は書いてないという…

  2. スズさん(39歳)ID:6577296・07/28

    知りたい☺︎知りたい

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