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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/28 15:26:57

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「あ、別に華音からも何も聞いてないですよ?でも、あの子は口は悪いけど甘えん坊さんだから、解っちゃうんですよね。」

「…甘えん坊ですか。」

口が悪くてクールなイメージのハナオト。

少し笑えた。

「うちは大家族なんですけど、華音だけは昔から私にベッタリで。」

「…言ってました。ばーちゃんとスパイごっこしてたって。」

「あら。華音とお会いになったの?」

…つい、言ってしまった。

と言うか…

この人、本当は知ってるんじゃないか?と、疑ってしまう…


「…実は、先日少し。」

「あら、そう…海さんは、麗の結婚式で華音と会った事は覚えてるの?」

苦笑いしてしまった。

実は…面識はないと思っていたが…

夕べ、ふと思い出した。

「トイレ…ですよね?」

「ふふっ。そう。」

「彼は覚えてるんですか?」

「もし覚えてるとしたら、根に持ってる方かしら。」

「…覚えてそうだ…」


陸兄の結婚式で…

めちゃくちゃ可愛い双子がいた。

俺が気付いた時には、なぜか二人とも正装ではなく。

薄手のセーターに白と紺のストライプ柄のズボンだった。

どうも、写真撮影の後で、裏にある池に二人仲良くハマってしまったらしい。

二人とも髪の毛が長くて…

ふわふわしたイメージで、とにかく可愛かった。

その片方に…

「…おしっこ。」

と見つめられて。

「え…」

続いて、二人目にも見つめて同じことを言われて。

道場になら、女子トイレは個室が三つあるし…と思い、道場のトイレに連れて行った。


…なぜか、一人は入るのをためらっていた。

もう一人も、俺を見たり…片割れを見たり…


結局、双子はそれぞれトイレに行き、それ以降は会わなかった。

後で陸兄が。

「あの双子、そっくりだけど俺と織みたく男と女だぜ。」

…悪い事をした。と思った。

いくら小さくても、プライドがあったかもしれない。


「帰って、華音が女子トイレに行った事を聞かされて。どうして男の子だって言わなかったの?って聞いたら、連れて行ってくれたお兄ちゃんに悪いから。って。ほんと…余計な気遣いをする4歳児って笑っちゃったわ。」

「……」

さくらさんは笑ったけど…

俺は…何となく笑えなかった。

ハナオト。

おまえ、昔からそうやって、誰かの気持ちが優先か?


「彼は…いい人間ですね。」

伏し目がちに言うと、さくらさんは。

「だけど、人一倍素直じゃないのが痛い所なんです。」

小さく笑った。

「…さくらさん。」

「はい。」

「少し…吐き出していいですか?」

俺がさくらさんの目を見て言うと。

「…こんなおばあちゃんが相手でいいなら。」

さくらさんは、そう言って指を組んだ。


「実は俺…去年、一般人を死なせてしまって…」

俺は、その事件の全貌を話した。

さくらさんはずっと、言葉を挟むことなく聞いてくれた。

紅美にも話せなかった…俺の話を。

そして…

「辛いね。」

一言…

まるで、友達みたいにそう言ってくれた。

「海さん、頭…あ、先代から、何か聞いてる?」

「え?どういった事をですか?」

「…先代が、一般人を死なせてしまった話。」

「……少し。」

「あの現場に…私もいたの。」

「え…?」

それは…さくらさんの人生を変えてしまった日だった。

訪れた馴染みのジュエリーショップで。

さくらさんと友人は事件に巻き込まれた。

もう二階堂からは離れていたはずのさくらさんだが…

窮地で実力を発揮する事となった。

今では使われていないが、当時は『物をこすり合わせて通信する』という事が耳のいい人物限定で訓練されていた。

さくらさんも…その一人。

相当な集中力も要されるはず…。


「でも、あの信号のおかげで彼を部屋から出せたのに…結局は死なせてしまった。あれは、先代のせいじゃなくて…私のせい。」

「…その事件、知ってます。テロ組織の内部抗争だったんですよね?」

「ええ。」

「確か…立てこもった犯人グループ16名は全員射殺された事件ですね。」

「…何の罪もない友人を殺されて…」

はっ…と、顔を上げた。

感情的になり過ぎる…不適格者…

まさか…

「頭に来たの。一瞬のうちにスイッチが入って…気が付いたら、お店に向かって走ってた。」

「……」

さくらさんは…小さく溜息をつくと。

「あれは二階堂。あれは一般人。あれは…敵。不思議なほど一瞬で見分けがついて、次々に撃った。」

目を伏せた。

「その時のあたしは…二階堂から離れて7年。そんな事をして許されるはずがない。」

「……」

「…ただの、人殺しよ。」

身体が…震えた。

確かに、二階堂に籍のない者がそれだけの相手を撃ち殺したとなると…

だが、本当か?

本当に、この細身の女性が…一人で?


「先代に、記憶を消されたのでは…?」

静かに問いかけると。

「ええ…だけど…受けたショックが大きすぎたせいか…忘れる力と忘れてはならないと思う意識で、長い間…霧がかかったような状態だったの。」

「……」

「だけど…こっちに来て、たぶんほとんど…思い出したと思う。」

「…ショックでは?」

酷な質問だと思いつつ、俺は前のめりになって問いかけた。

「…ショックだけど、自分がした事だから。」

さくらさんは、俺の目を見て言った。

「あの時…友人が撃たれたショックと、自分が撃った人間の顔…もしかしたら私は、今からそれらで眠れない夜を過ごすことになるかもしれないわね。」

「…こう言っては失礼ですが、もう一度記憶を…」

消してはいかがですか。

そう言いかけたが…

「眠れない夜があったとしても、明日は来るから。」

「……」

「忘れなくていい事は忘れない。忘れなきゃいけない事は忘れたければ忘れる。忘れたくない事は意地でも忘れない。」

「…面白い人ですね。」

小さく笑ってしまうと。

「感情のままに生きるのは素敵なんだろうなって、今になって気が付いたの。」

さくらさんは…少しハナオトを思わせる笑顔を見せた。

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