いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/28 14:23:53

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紅美と別れて…気持ち新たに仕事に励んだ。

本部で最近の現場の報告書に目を通していると。

『ボス、お客様です。』

富樫の声。

「どうぞ。」

ドアが開いて、富樫が入って来た。

続いて入って来たのは…

「あ…」

「こんにちは。」

桐生院…さくらさん。

ハナオトと…紅美のおばあさん。


「あ…先日は祖父の所まで、わざわざありがとうございました。」

椅子から立って、さくらさんを出迎える。

「いいえ。とんでもない。今…お仕事のお邪魔にならないかしら?」

「大丈夫です。何か飲み物でも入れましょうか?」

「ありがとう。いただきます。」


富樫にコーヒーを頼んで、さくらさんと向かい合ってソファーに座った。

…さくらさん。

心の中でも、そう呼び方を変えたのは…

昨日、色々調べて…この人を見る目が変わったせいもある。

管理番号10558XXMM

森崎さくら。

もっとも…

この人は14歳で二階堂を辞めた事になっている。

しかも…XXMMがつく管理番号は…

不適格者だ。


どうしても気になった俺は、さくらさんと同期の山崎浩也さんに連絡を取った。

浩也さんは今も日本で親父たちのサポートをしてくれている。

俺からの連絡に、浩也さんは…

『…お知りになって、どうなさるおつもりですか?』

ゆっくりと、低い声で言った。

「彼女の訪問で、先代の病状が快復しました。」

『え…?さくらが先代の所に…?』

「はい。」

『……』

それから浩也さんは…

もし、いつか…

親父たちか俺に聞かれることがあったら、知りたい理由によっては話していい。と、先代に言われている事を話し始めた。


『さくらは、出来過ぎる人間だったんです。』

「出来過ぎる…」

不適格者と書かれると、どうしても訓練に脱落したと思われがちだが…

以前、噂に聞いた事はあった。

過去に一人だけ…

出来過ぎて二階堂を辞めさせられた人間がいる。と…。


『何に関しても高い能力を持っていました。ですが…さくらは二階堂の人間が持ち合わせていない、人としての感情も豊かで、現場でのそれは…危険を伴う物として判断されました。』

つまり…

感情的になり過ぎるゆえ、冷静な判断が出来なくなる場合がある。

…二階堂の人間が持ち合わせていない、人としての感情…

浩也さんの言葉に、少しだけ笑った。

確かに。

俺達は普通のようで、普通じゃない事を強いられた。

時には、共に戦ってきた者を目の前でためらいなく撃たなくてはならない覚悟もいる。

…そんな世界だ。


『それに…さくらは外の世界に夢を持ちました。』

「それは?」

『歌です。』

「歌…」

さくらさんの娘さんは、陸兄と同じバンドでボーカルをしている。

彼女は夢を果たせなかったけど、娘さんにそれが引き継がれたというわけか…


「彼女は二階堂の全てを知ったまま、引退したのですか?」

これが気になっていた。

秘密機関の全てを知ったままで、一般家庭に嫁ぐのは…あり得ない。

特に…そこまで出来る人間であれば。


『…先代が、記憶を消されたはずです。』

「記憶を…?」

『はい。実際、それは効いていたとも思われます。しかし…』

浩也さんは少し間をあけて。

『陸坊ちゃんの結婚式の時、私に話しかけて来ました。』

「…でも…浩也さんは…」

『はい。二度顔を変えております。』

「なのに?」

『さくらは、耳がいい事でも知られていました。きっと、私の声を覚えていたのだと思います。どこかでお会いしましたよね?という声掛けでしたが…驚きました。』

「…先代の記憶の消し方が甘かったと言う事ですか?」

『いえ…恐らく…何かをキッカケに、さくらがあの頃の事を思い出したいと強く思うようになったのではないでしょうか…』

「……」

施設で会ったさくらさんは…

とても、屈託なく笑う人で。

だけど、どこか…物悲しい雰囲気も持ち備えていた。



「昨日、紅美とデートしたんですよ。」

運ばれたコーヒーを飲みながら、さくらさんが言った。

紅美と言う名前に、過敏に反応すまいと思ったが…

「そうですか。楽しまれましたか?」

少しだけ…目を合わせるのが遅れた。

…ダメだな。

目の前にいるこの人が、高い能力を持っていたというのは…昔の話だというのに。

なぜか、緊張してしまう。

二階堂としての、才能に。


「ええ。とても。」

何も知らなければ…ここまで緊張する事もなかっただろう。と思うと、知ってしまった事を、少しばかり後悔した。


「海さん。」

「はい。」

「どうして、紅美と結婚なさらないの?」

「…え?」

すごく…思いがけない言葉を出されてしまって。

俺は不覚にも面食らった。

「あ…えー…いや、その件は………彼女から…?」

「施設で見てたら分かりましたよ。お互いを見る目が、とても愛おしそうでしたから。でも…一昨日会った紅美は、もう吹っ切ったかのように普通でした。」

「……」

「でも、あなたはまだ違うみたいね。」

さくらさんは…俺の目を見て言った。

見透かされてるのか…。

つい、目を逸らすと。

「世界が違うから?」

さくらさんは、静かな声。

「…そうですね。」

「どうしてかしら…海さん。」

「……」

「世界は、一つしかないのよ?」

顔を上げた。

相変わらず面食らってる俺に、さくらさんは優しく笑って。

「二階堂を変えたいなら、あなたが垣根を越えなきゃ。」

優しく笑ってるのに…強い目で言ってくれた。

「…でも、二階堂は基本…夫婦で仕事をします。」

「紅美には出来ないと思う?」

「…彼女はメディアに出過ぎてる。危険すぎます。それに…仲間を裏切らせたくない。」

「華音の事?」

「……」

この人は…

何もかも…

知ってるのか…?

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コメント2

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6577190・07/28

    ルチアーナさん
    なんと!
    勿体無いお言葉、ありがとうございます!
    本職だなんてとんでもない…こんな誤字脱字交えた稚拙な文章、ちゃんと伝わるかしら(・ω・;)と思いながら書いてる事も多々です。
    読んで下さる皆さんの、読解力と高い感受性に救われております。

    アメブロへのご訪問もありがとうございます😊
    まだまだ前回の最後までへの道のりも長いです。
    登場人物の多さと関係性の複雑さにてんやわんやすると思いますが、これからも宜しくお願いしますね✨

  2. ルチアーナさん(48歳)ID:6577138・07/28

    ヒカリさん、毎日の更新とっても楽しみにしてます。 私は、今回 初めて読んでいます。 アメブロも、昨日初めて読みました。 こんな素敵で、楽しいお話を考えられるヒカリさん、すごいです。 本職では、ないのですか? とても、素人の方とは、思えません。 これからも、楽しみにしてます。

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