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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/28 11:59:51

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「紅美…」

「…あっ…海く…」

施設を出た後、紅美は俺の部屋に来たいと言った。

狭い部屋の狭いベッドで…

俺達はひたすら抱き合った。

もう…時間がない。


じいさんのたっての願いで、紅美は『イマジン』を歌った。

それはまるで二階堂の夢のような歌で。

俺は目を閉じて…紅美の歌声を聴いた。

今はまだ…『俺のもの』と言っても許されるであろうその愛しい声を、しっかりと覚えておくために。


もし…

もし、これで紅美が妊娠したら…

そんな考えが時々脳裏をかすめた。

そのたびに、眉間に力を入れてそんな邪念を振り払おうとした。

また傷付けるつもりか?

いや…俺のものにするための、一つの手段かもしれないぞ?

そんな葛藤を繰り返しながらも…

「愛してる…」

耳元で囁かれるその言葉を聞くと…

「…俺もだ。紅美…愛してる。」

邪念は…消し去った。

守らなくてはならない。

紅美の…これからを。


タイムリミットが訪れて。

紅美は唇を食いしばった。

本心は…俺だって同じだ。

だけど、俺が進むためにも…

この別れは必要だ。

…いや…

まだ、決まってない。

…別れとは…決まってない。


紅美をアパートの前まで送って。

「紅美…このまま…」

紅美の目を見つめながら…言う。

「このまま二人で、どこか遠くへ逃げないか?」

当然だが…紅美は驚いた顔をした。

「…え?」

「俺は、おまえのためなら二階堂を捨ててもいい。」

「……」

「おまえも…俺のために…バンドも歌も…家族も…捨ててくれないか。」

紅美は、信じられないと言った顔だった。

…そうだろうな。

俺もだよ。

まさか…俺が…二階堂を捨ててまで…

「今の俺には、それぐらいの覚悟がある。」

「……」

「それぐらいの覚悟を持って…おまえを愛してる。」

俺の言葉に、紅美はずっと無言で…俺を見つめた。

表情には出さないようにしていたが…沈黙の間、俺の胸はずっと今までになく大きく音を立てていた。

…選ばれたい。

いや…選ばれたくない…

…本音は?


本音は……

紅美。

俺を選んでくれ。

そして…二人で、知らない街へ行くんだ。

もっとも…二階堂の手にかかれば、簡単に見つけ出されてしまうかもしれないが。

俺達の事を誰も知らない街へ行って。

静かに…

二人だけで生活するんだ。


少しだけ、そんな妄想をしながら…紅美の返事を待った。

驚いた顔で俺を見つめていた紅美は、パチパチと瞬きをしながらうつむいて考え込み。

唇を食いしばって…何度も俺を見上げた。

しかしやがて…

「……ごめん…」

うつむいた紅美から、小さな声が漏れた。

「……」

俺は目を伏せて…紅美の頭を撫でる。

やはり…そうか。

分かってはいたが…胸は痛い。

でも、選ばれなくて良かったとも思う。


「…それでこそ、紅美だ。」

「…試したの…?」

「まさか。yesって言ってくれたら、本当に連れて逃げてたよ。」

「……」

「でも、Noって言って欲しかったんだと思う。その証拠に…今、紅美の事をますます好きになった。」

「海くん…」

紅美を優しく抱きしめる。


捨てられるわけがない。

選ばれたいと思ったが…捨てさせなくて済む事にホッとした。

…もしそうなっていたら…結局俺は自分を呪う。


「俺は…おまえを誇りに思うよ。」

「海くん…」

愛してるよ…紅美。

誰よりも。

口には出さずに、抱きしめた腕に気持ちをこめた。


「…ありがとな。」

「…あたしこそ…」

「応援してる。」

「…あたしも…」

名残惜しいが…腕を離した。

「海くん!!」

車に乗り込むと、紅美の声。

「バイバイ!!またね!!」

バックミラーに入り込んだ紅美は。

大きく手を振っている。

俺はそれに、窓を開けて手だけ振って応えた。

バイバイ、またね…か。


紅美。


今度こそ…


本当にお別れだな…。

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