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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/28 09:39:51

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「…海くん。」

「ん?」

「もしかしたら…聞きたくないって思うかもしれないけど、聞いてくれる?」

紅美が、体を起こして…俺の顔を見ながら言った。

「…ああ。」

紅美の髪の毛を、耳にかける。

「久世慎太郎…覚えてる?」

「ああ。」

紅美が家出した時に…面倒を見てくれた男。

…と言うより…

紅美と…愛し合った男。


運命のいたずらとしか言いようがないが…

紅美の実の父親が起こした事件で、久世慎太郎の父親と弟は亡くなった。

そんな二人が…出会って、恋に落ちた。


「あたし…海くんと別れた後、すごく辛くて…誰かに壊して欲しいって思ってた。」

「……」

紅美は、俺の胸に顔を埋めて。

左手で、俺の鎖骨を触った。

「そんな時に…慎太郎が現れて。」

彼は確か…

もう、故郷に帰って、紅美には会わないと言っていたが…

「最初は…ただ会いに来たって…だけど、ヘヴンにいた子達が…慎太郎は余命わずかだって…」

「え…?」

つい、紅美の顔を見る。

「でも、わっちゃんの病院で…辛い治療を受けたんだ。まあ…手術ができないのは変わらなかったけど…でも、今も故郷で生きてるんだよ?すごいよね。」

「…そうか…」


まさか、彼の名前が出てくるとは思わなかった。

もう、過去の人間だと…


「…慎太郎に…色々気付かされた。」

「……」

「辛い事を越えられなくて、もがいてる今、あたしの周りには…愛してくれる人は一人もいないか?って。どんなに小さくても、幸せだと思える事を、忘れてないか?って…」

分かりそうで見落としがちな想い。

まさか彼が…

紅美を救ってくれようとは…


「あたし…ほんと、バカだなって思った。すごく恵まれた環境に育って来たのに…父さんだって母さんだって…みんなあたしを愛してくれてたのに…」

…ハナオトの言った通り…

あの時、無理矢理『愛してた』と言わせてしまったからなのか…?

紅美は…

俺の何倍も苦しんでたなんて…


「…紅美。」

頭を撫でる。

「ん?」

「…悪かったな…」

「あ。ごめん。」

「え?」

紅美は再び起き上がると。

「でもね…」

俺の手を取った。

「でも…もう…限られた時間なのに…今がすごく楽しいから…さ。」

「……」

「だから、あの時の辛さなんて…どうでも良くなったって言うかさ…あれがあったから、今があるんだって思うと……えっ…?」

紅美の言葉の途中。

俺は紅美の体をすくって、下にした。

「び…びっくりした…」

「…あれがあったから今がある?」

「そうでしょ…?」

「…おまえは…忘れてしまいたい事はないのか?」

俺の問いかけに、紅美は少しだけキョトンとした後に。

「そりゃあ…忘れたいって思った時期もあったけど…」

「……」

「好きな人との時間を、忘れるなんて…自分の気持ちを否定するのと同じじゃない。」

「……」

「苦しいのは嫌いだけどさ…きっと…何かのサインだったんだよ。」

「…サイン…?」

「この苦しみを、忘れるな。って。」

「……」

「痛みとして覚えてたら…きっと…繰り返さない。」

最後の方は…

俺に対して言っているのだと気付いた。

俺が…一般人を死なせてしまった事への…贖罪の念に囚われている事に対して…。


そして…気付いた。


紅美は、明日の夜には。


きっと…俺を選ばない。

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