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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/25 22:55:50

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名刺に書いてある住所は…

以前住んでたアパートから、2ブロックの場所にあるビルだった。

どちらかと言うと治安は良くなさそうで…

ガラの悪い連中が集まってるイメージ…

…こんな時間にそこに行ったら…

たぶん、あたし…叱られるよね。


って思ったけど。

空ちゃんに後押しされた。


地下鉄に乗って、その街に行って。

一応、気を付けながら…そのビルにたどり着いた。

玄関でブザーを鳴らしてみる。

…けど、無反応。


留守…かな…。


何となく、ここまで来たら帰りたくなくて。

あたしは、屋上に上がってみる事にした。

海くんの住んでる街を…見渡してみたい。

エレベーターは屋上まで行かなくて。

その下の階から、階段で上った。


開いたままのドアから屋上に出ると、意外と周りのビルが低くて、ここは空に近い気がした。


どこからともなく立ち上って来る煙とか。

車の騒音。

誰かの怒鳴り声。

そんなのを聞きながら、あたしは空を見上げてみる。

…星、きれいだな…


ゆっくりと屋上を歩き始めると…

「……」

フェンスに持たれて…タバコを吸ってる人がいる。

あたしには、それが…海くんにしか見えなかった。

あのシルエット…そうだよ。

ふいに、桜花の屋上を思い出す。

あの頃も…こうやって、海くんは…

何か悩みがあると、屋上でタバコを吸ってた。


ゆっくりと近付いて…

「…先生、何悩んでんの?」

声をかける。

「………おまえ…」

やっぱり。

海くん…。

「…見事だな。足音もたてずに。」

「…あたしが敵なら、やられてたね。」

「……」

海くんが、小さく笑った気がした。

…こんなやりとり…

昔あったよね…。


「…空か。」

「うん。」

「…ったく…」

海くんはそばにあった灰皿にタバコを捨てると。

「送ってくから、帰れ。」

あたしの腕も取らずに…歩き始めた。

…動くわけないじゃん。

しばらく歩いて行った海くんは、仕方なさそうに振り返って。

「おい。」

低い声で言った。

「…いいじゃん。ちょっとぐらい。」

「良くない。」

「なんで。」

「邪魔だ。」

「……」

そう…即答されると、ちょっと…へこむ気もしたけど。

「…じゃないクセに…」

「あ?」

「邪魔なんかじゃないクセに。」

あたしは、ツカツカと海くんに歩み寄って言う。

「あたし、こっちでのデビューが決まったの。だから、海くんに報告したかった。おめでとうって言ってほしかった。」

「…おめでとう。」

「お祝いしてよ。」

「それは知らない。さあ、帰るぞ。」

グッと、手首を掴まれた。

「やだ。」

「…紅美。」

「いやだ。」

「…いい加減にしろ。」

その…低い声に、あたしは少し…ぞっとした。

「……」

黙ったまま、海くんを見つめる。

「頼むから…もう俺に関わらないでくれ。」

「…あたし、言ったよね。あたし、海くんの事好きだか」

「やめろ。」

海くんの低い声は、変わらなかった。

あたしに…好きって言われたくない…って事?


「……」

「……おまえの事を考えると、仕事が手につかなくなる。」

「…え?」

ドキッとした。

だけど…

「でもそれは、愛とかそういう想いの事じゃない。おまえに対する罪悪感が強すぎて…気持ちが落ち着かない。」

「……」

「俺は二階堂を…変える立場にある。仕事だけに専念したい…」

「……」

「俺が悪い。全部俺が悪い。だけど、頼む…もう、俺の中から…」

「……」

「…消えてくれ…」


嫌いでもいい。

そう…思ってはいたけど…

実際…こうやって…口にされると…


「…そっか…あたし、とんだ邪念になってたんだね。」

「……」

「罪悪感とか…海くん…バカじゃない?」

「……」

「ほんと…バカだよ…」


おまえの事考えると、仕事が手につかなくなる…ってさ。

普通、そんなにあたしの事好きなの?って…思っちゃうじゃん。

俺の中から消えてくれ…だなんてさ…

今、あたし…

すごい事言われた。

ほんと…

すごい…

へこむ…


「…なら…あの時、話したいなんて…」

今更なのに。

あたしは、温泉で会った事を持ち出した。

「話したいなんて、言わなきゃ良かったじゃない。あれで、あれで…あたしは…好きって再確認したし…」

「…そうだな。もう、おまえも終わった事にしてくれてると思ったから…。でも、話さなきゃ良かった。」

「……」

「頼むから、帰れ。」

海くんの声には…

ためらいがなくなった。

本気で、あたしを帰らせたがってる。

本気で、あたしに消えて欲しがってる。


「…分かった。帰る。」

「そうしてくれ。」

「…一人で帰る。」

「…分かった。」

「……」

泣かない。

泣くもんか。


だけど…

笑顔なんて…絶対無理。


涙も笑顔も。


きっと、海くんの罪悪感を、もっともっと大きくする。


あたしは無言で海くんから離れると。

一度だけ…夜空を見上げた。

すると、それにつられたのか…海くんも、空を見上げた。


…忘れない。

最後に…一緒に見た夜空。


海くんは、夜空を見上げたままだった。

あたしは…そのまま、静かに屋上を後にした。



バイバイ。

今度こそ…


バイバイ。



海くん。

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コメント4

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6576201・07/26

    スズさん
    ありがとうございます☺️
    恋とか愛とか、情熱がある証拠ですね!
    もはや私は旦那に色恋があろうとも、応援してしまいそう( ´Д` )

  2. ヒカリさん(99歳)ID:6576200・07/26

    アリアンヌさん
    ありがとうございます☺️
    アリアンヌさんの感情移入に感謝✨
    紅美ちゃんになりきって読んでいただくと、さらに…

  3. スズさん(39歳)ID:6576159・07/26

    おはようございます

    海くんも、紅美ちゃんも辛いね(T ^ T)あぁぁー泣けるー泣ける(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

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