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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/25 19:37:27

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デビューが決まった。

そうなると…

あたしは、それを伝えたい人がいた。

…海くん。


こっちにいても、全く連絡取らないし…会う事もないし…

だけど、何となくだけど…

海くんは、あたしがどうしてるかを知ってくれてる気がしてた。

…自惚れかな…。


久しぶりにオフが出来て。

沙都と沙也伽は日本にいったん帰国した。

あたしにも帰ろうって沙都はしつこく言ったけど、行きたい所があるからって言うと…渋々諦めた。

ノンくんは、こっちの事務所の看板バンドのレコーディングを見学したいって、オフでも毎日事務所に通う宣言。

ふむ…

音楽バカだ。


母さんは本部の場所を知ってるのかなと思って、電話してみたんだけど。

『車であちこち曲がりくねって連れて行かれたから、覚えてないわよー。』

曲がりくねらなくても、こっちの地理を知らない母さんに覚えられるわけがなかった。

そんなわけで…

わっちゃんに電話すると。

『今、空がそっち行ってるから連絡してみろよ。』

頼もしい言葉が。

…でも…

空ちゃんと、海くんの事は話しにくいな…。

と思ってたけど。


「紅美。」

空ちゃんの方から連絡をくれて。

あたしは、約束のカプリに出向いた。

「久しぶりだね。」

「ほんと。あんた、こっちでデビューなんてすごいじゃない。」

空ちゃんはカプリの真ん中にあるステージを見て。

「ここで…紅美がギター弾きながら歌ったのを聴いたの、昨日の事みたいに思い出すわ。」

少し…感慨深そうに言った。

「すごく昔みたいに言うけど、ほんの一年半ぐらい前の話だよね?」

あたしが笑いながら言うと。

「…良かった。あんたが笑ってて。」

空ちゃんは…少しだけ目を伏せた。

「……」

そっか。

空ちゃんは…あたしが流産した時病室にいてくれたし…

色々知ってるはずなのに。

あの後…こうやって話す機会なんてなくて。

マキちゃんとここで再会して、調子に乗ってギター持ってステージで歌った時、客席にいたのを見かけたり。

そのステージがキッカケで、DANGERでここに出た時も…

客席にいたのが見えて。

…空ちゃん、カプリが好きだなあ。

なんて思ったっけ。


それからは…

…椿で偶然会ったぐらいだっけ…。


「明日は?何かある?」

空ちゃんが、あたしの顔を覗き込みながら言った。

「え?ううん…何もないよ。」

「じゃ、今夜はとことん飲もう!!」

「……」

あたしが目を丸くすると。

「いいじゃない。今夜は妻も母もお休み。さ、紅美、付き合ってよ。」

空ちゃんは気持ちいいぐらいの笑顔で…

「かんぱーい♪」

グラスを合わせた。


「あはは!!そうそう!!あれって泉が言ったんだっけ!?」

以前は浴びるほど飲んでたけど、出産してからはあまりお酒を飲まなくなったらしい空ちゃんは。

かなり弱くなってしまってたのか…

ビール二杯で、すごく酔っ払った。

「空ちゃんが言ったんだよ…」

「えー!?あたし、そんな失礼な事言った!?」

「言ったって…それより、声が大きいよ。他のテーブルの人、みんな見てる。」

あたしが周りを見渡しながら言うと。

「…よし。紅美んち行こ。」

空ちゃんは、バッグを持って立ち上がった。

「え…えっ?」

「行こうよ。今夜泊めて。」

「……」

あたしは苦笑いしながらも、腕を組んできた空ちゃんを見て。

「…温泉に行ってた頃を思い出すね。」

何となく…小さくつぶやいてしまった。

すると…

「……」

空ちゃんは急に立ち止まって。

「…楽しかったね…あの頃…」

沈んだ声…。

「…とにかく帰ろっか。歩くの危なそうだから、タクシーにしよ。」

カプリを出て、店の前に停まってたタクシーに乗り込む。

その間…空ちゃんは泣きそうな顔でうつむいてて。

ああ…あたし、余計な事言っちゃったな…なんて思った。


「へー…いいとこ住んでるわね。」

アパートについて、空ちゃんは部屋に入ってすぐにキョロキョロしながら言った。

「空ちゃん、コーヒーにする?」

あたしがキッチンから声をかけると。

「何言ってんのよ。ビールビール。」

「…もうやめといたら?」

「えー。」

唇を尖らせて、不服そうな顔。

「…じゃ、もう一本だけね。」

冷蔵庫から缶ビールを出して、一本を空ちゃんに渡す。

二人してソファーに座って…

「最近、兄貴に会った?」

缶ビールを開けながら、空ちゃんが言った。

「…ううん。連絡先分かんないし。」

「あたしさ…後悔してるんだよね…」

「後悔?」

「朝子と泉とでこっちに来た時…紅美と兄貴の様子見て、すぐ気付いたんだ。二人が怪しいって。」

「……」

「あの時、すぐに朝子に諦めろって言えば良かった。それに…怪我したからって…兄貴が朝子を選ぶって言った時、止めれば良かった…って。」

「空ちゃん…」

「…あたしだけ…幸せになっちゃったみたいで…ずっと心苦しいんだよ…」

「……」

一気に…気持ちがあの頃に戻った。

…海くんの事が大好きで。

歌う事も楽しくて。

毎日が充実してて。

だけど…朝子ちゃんが来た時、あたしは…怖かった。

…朝子ちゃんが海くんを待たないって言った事に対して、本当にいいの?なんて聞いたクセに。

あたしは…結局、朝子ちゃんを傷付けたくなかったんだ。

それに…空ちゃんと泉ちゃんも。

あたしなんかが相手だって知ったら、きっとみんなガッカリする。

そう…どこかで思ってたんだと思う。

朝子ちゃんはともかく…空ちゃん泉ちゃんは、海くんの妹。

二人とも、ブラコンだって言ってたし。

その相手が…戸籍上はイトコで。

実の父親が犯罪者…


あたしにとっても、海くんは完璧な人で。

だからこそ…

相手があたしなんかじゃ…って気持ちが大きかったのかもしれない。

二人でいる間は良かった。

まるで夢のような毎日で。

そこでは、二階堂なんて関係なくて。

海くんは、仕事を終えたら帰って来て、あたしを抱きしめて眠る。

そんな…普通に思える毎日が…たまらなく愛しかった。

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