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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/25 15:49:19

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「……え?」

「……」

ノンくんはくいしばって…あたしが掴んでない方の腕を上げて。

シャツの袖で…涙を拭いた。

「な…なんで…?」

「…はっ…」

ノンくんは小さく笑って鼻水をすすると。

「…悪い。ちょっと…感動と自己嫌悪が一度に来た。」

「…感動と自己嫌悪…?」

「情けねーな。みっともないし。だから…悪いけど、ほっといてくれないか。」

ノンくんはそう言ったけど…

「…ダメ。」

あたしは、掴んだ腕をぐい、と引っ張って。

「ちゃんと話してよ。」

ビルの外にある、赤いベンチに並んで座った。

ベンチの裏には、Deep Redが何かの賞を獲った記念日の入った小さなプレートがあって。

この事務所って、どんな形ででも栄光を残してくれるんだなあ。なんて、ちょっと笑えた。


「さ。なんで感動と自己嫌悪?」

「……」

「情けないとかみっともないとかじゃないよ。あたし達、仲間じゃん。」

「…ふっ…」

「何よ。」

「いや…そうだな。」

ノンくんは観念したように溜息をつくと。

「俺は…おまえの歌じゃないと弾かない。そう決めてたし…沙都と沙也伽にももっと上達して欲しいって、スパルタでここまでやって来た。」

話し始めた。

「うん。」

「正直…あいつら泣きそうな顔してる事も多かったし…俺はどうしても成功したい反面…自分のエゴに付き合わせてるような感覚になり始めてさ。」

「……」

「生まれて初めて…ちゃんと頑張りたいって思った。だけど…俺が頑張ると、みんなが頑張って…埋まっていいはずの差は、縮まるどころか広がる気がした。」

…なるほど。

嫌味じゃなく、ノンくんは本当に上手い。


Live aliveのDeep Redのステージには。

SHE'S-HE'Sの朝霧光史さんと、F'sの浅香京介さんが、Deep Redのドラマーであるミツグさんのサポートとして、出演した。

ミツグさんが大御所だとしても…あたしから見たら、光史さんも浅香さんも大ベテランで。

そんな人達と…

ノンくんと、映ちゃんは、それぞれギターとベースでステージに立った。

そして…ノンくんは。

あの世界のDeep Redのマノン…朝霧真音さんを挑発するようなソロを弾いて。

マノンさんは、『久しぶりに血が騒いだ!!』って…二人のソロ合戦は、会場を興奮のるつぼにした。

あれを見て…

ノンくん、あんなに弾けるんだ。

って…正直思った。


「俺は、昔から…どこか…人に合わせて上手くいくなら、それでいいって思う所があってさ。」

「…うん。」

「だから、DANGERも…俺の立ち位置はそれで十分って、そんなつもりはなくても…どこかで思ってたのかもな。」

ノンくんが見上げた空を、あたしも見上げる。

今日は雲が多くて、青空は見当たらない。


「俺が実際そうされたら…仕方ねーよ。差があるんだから。って、たぶん思うだろうけど…みんなには思われたくないって言うかさ…他の誰に思われるのは良くても、紅美たちには思われたくなくて。」

「…うん。」

「実は、こっち来てずっと…葛藤してた。」

ノンくんは膝の上で組んだ指に目を落としたまま、小さくそう言った。

…こっち来てからずっとだなんて…

ノンくん、バカだよ。

こっち来てから…なんて言いながら。

きっとノンくんは、ずっと思ってたはず。

小さな頃から。

だけどあたし達に対して…本気になってくれたからこそ、今こうして…その葛藤に涙を流してくれた。


「…早く言えば良かったのに。」

前に伸ばした足の靴先を見ながら言う。

何となくだけど…ノンくんとの心の距離が近付いた気がした。

「言えるかよ。」

「言えよ。」

「バーカ。」

「で…感動は?」

あたしがノンくんを覗き込みながら問いかけると。

「感動は…」

ノンくんは少しだけ伏し目がちになって。

「…紅美はいつも前向きだな。って。」

苦笑いしながら言った。

「…それが感動?」

「俺は楽な方を選びがちだけど、おまえは辛い中でもそれに楽しさと夢を見出す。」

「……」

合わせる事が楽だなんてさ…

ノンくん、もう…そういうのに慣れちゃってたんだな。って思った。

自分の全力を抑えて、誰かに合わせる事が、楽……なわけ、ないじゃん‼︎


「ツインボーカル?ツインリード?俺、考えもしなかったぜ?」

「…反対?」

あたしが目を細めて言うと。

「……」

ノンくんは、黙ってしまった。

「……言ってよ。言わなきゃ分かんないよ。」

ノンくんの腕を、ペシッと叩く。

「いてっ。」

「ほら、早く。」

「……」

ノンくんはもう一度、空を見上げた。

すると、雲の隙間から少しだけ光が射して来て。

あたし達が眩しそうにそれを見てると…雲が風に流されて、青空が顔を覗かせた。


「俺は、正直…今もおまえのボーカルで弾きたいって気持ちが強い。だから、ツインボーカルって言われると、戸惑いの方が大きい。」

「…うん。」

「だけど…やってみない手はないのかな。とも思う。紅美と俺で、化学反応的な何かが起きれば…それが強味になるのは間違いないし。」

「…うん。」

「でも、普通さ…こういうのって、試してから言わないか?」

そう言ってあたしの顔を見たノンくんは、久しぶりの優しい笑顔で。

それが…あたしを笑顔にした。

「ははっ…ほんとだ。」

「だろ?」

「でも…高原さんだって、歌を聴かせてないのにDeep Redに入れてくれって頼んだって言ってたじゃない。」

「あの人と俺達を比べるなよ。」

「大丈夫だよ。ノンくんとあたしの声なら…最強だよ。」

「……」

ノンくんは無言であたしの頭をポンポンとしながら小さく笑って。

「…ほんと…おまえのそういう強気なとこ…救われる。」

らしくない事を言った。


何だか飄々としてて、掴み所がないなって思ってたノンくん。

本当は弱音吐きたい時だってあるよね。

…これからは、そういうのも気付いてあげたいって思った。


「あたしだって、ノンくんに救われまくりだよ。」

「……」

「あたし達をさ、もっともっと信用して、もっともっと引っ張りあげまくってよ。」

あたしも、ノンくんの頭をポンポンとしながら言った。

すると…

「そういう話は、二人だけじゃなくて、全員でしない?」

後ろの窓が開いて、沙都と沙也伽が顔を覗かせながら、頬を膨らませた。

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コメント4

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6576205・07/26

    ココロさん
    年長の娘さん(*´∀`*)可愛いですね😍
    おうちで葉っぱと貝殻で過ごすと、外出時に「どうして今日は服着てるの?」と言われてしまう可能性が(´゚艸゚)ププッ

    私は運転中に保冷剤に作業着専門店のタオルを巻いて装着してますが、もはやそれすら忘れてお店に入ってしまいます。←そして知人に遭遇して指摘される

    この暑さ、格好どうこう言ってられませんね〜( ´Д` )

  2. ココロさん(77歳)ID:6575996・07/25

    ヒカリさん♪

    なんですとー‼
    はっ…葉っぱや、貝殻でも許されると⁉
    いやいや…さすがにそんな大事故は、家族に悪いです( ̄▽ ̄;)
    ただ、最近「おっぱい」という言葉に過剰反応する年長の娘だけは大喜びかもしれませんが…(^_^;)

    ヒカリさんも、本当にバカみたいな暑さですから、格好なんて気にせずに、ご自愛下さいね(*^^*)

  3. ヒカリさん(99歳)ID:6575960・07/25

    ココロさん
    ありがとうございます☺️
    ココロさん、腰痛持ちなんですか( ´Д` )
    身体に痛い箇所があると、それだけで労力かかるというのに…この酷暑!
    いいんです。
    ココロさんはタンクトップにショーパンでいいんです!
    何なら葉っぱや貝殻でも許されます!
    腰、お大事にされて下さい✨

    紅美ちゃん、人気者ですね(*´∀`*)
    嬉しいです😆

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