とある漫画家志望が書くお話

小説モドキ。創作物。性描写含みます。

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ラストマーメイド(7)

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2017/07/24 11:24:00

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「知花」
コハクは知花の頬にキスしながら囁く。
「一緒に逃げようか」
知花の涙を唇で拭き、コハクは顔をあげて微笑んだ。
コハクが何を言っているのか分からず、まぼろしのような笑顔を知花はボーッと見つめる。
「データと奴らを殺す。それからどっかの無人島にでも・・・」
殺す、と言うコハクの表情が、淡々と冷静に戻る。
不可能な夢物語だと、知花はずっと前から薄々思っていた。
相手は、この大型客船と同じ船を沈めて、修学旅行生全員を死んだ事にできるほどの権力。
300人以上の高校生達がここで秘密裏に実験され死んでいった事を、平気で握り潰せる冷酷な組織。
コハクの能力がいくら特化していても、対抗するにはあまりにも無謀過ぎる。
「・・・それで、何日ぐらい生きられるの?」
仮に無人島へ逃げられたとしても、餓死を待つ事になるだろう。
コハクは知花の上から体を横へずらした。
「瞬煉が飲んでた錠剤で、三ヶ月ぐらい・・・」
「そんなに生きられるんだ?」
錠剤が残っていると知り、知花は少しだけ安心した。
感染してから一週間、食べ物を何も口にしていない知花は、自分が長く生きられない事を感じていたから。
腕枕のように、コハクは知花を抱き締めた。
「知花。俺が戻るまで、待っててほしい」
私も行く、と言いそうになり知花は奥歯を噛んだ。
知花がいれば、瞬煉の時のようにコハクの足手まといになるのは目に見えている。
けれど、あの銃弾の中へと突き進むコハクの背中が、知らない所で倒れる気がして、離れるのが怖かった。
「絶対・・・戻ってきてね?」
知花はコハクにしがみついた。
もっと色々言いたい事がある。・・・もう一度、味方がいないか船内を探そうとか・・・散々試みたことなのに。
無理だと思ったら逃げようとも、言えない。コハクと瞬煉がどんな覚悟でこの船に忍び込んだかと思うと、言えなかった。

コハクの腕の中で、すすり泣きが静かになり、やがて寝息が聞こえ始める。初めて発現した能力を長時間使い続け、精神が磨り減ったのだろう。
コハクは知花から腕枕を引き抜き、シャツをかぶせた。
起き上がったコハクの胸には、紅いアザが6つ環状に刻まれている。
欠けた最後の一ヶ所の位置と全く同じ位置にアザを持つのが、知花だった。
それは、知花の心臓を喰らえばコハクが、柳の望む完全体となる事を意味している。
サッと衣服を身につけ、瞬煉の遺品から錠剤のケースを取り出した。
コハクは起きる気配の無い知花のそばにそれを置くと、そのまま腰をおろし知花の髪を撫でた。
「いつも心のそばにいるから」
それは瞬煉の最期の言葉だった。
心は心臓にあるのか、脳にあるのか。ウイルスは心臓と脳の一部に寄生する。しかし、心はまだある。心は魂にあるから・・・魂の存在を信じていた瞬煉の、口癖だった。
出産時の事故により植物人間状態だった瞬煉のために、母親の柳は人魚の研究をしていた。
コハクがモルモットのように受けていたあらゆる苦痛や恥辱を、瞬煉はいつもそばで見ていたと言う。
コハクは今も、瞬煉がどこかにいるような気がした。
知花の前髪をゆっくりとかきわけ、コハクは知花の寝顔をいつまでも、見つめていた。



             --- おわり ---

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