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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/25 11:50:30

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退院した。

海くんは、あの夜を境に姿を見せなくなって。

すると当然…会う事はなくなった。


ただ、今はバンドの事だ。と、あたしも思ってて。

会えない事はさほど気にならなかった。


あたしは気持ちを伝えたし。


退院して少しずつ…ボイストレーニングを始めた。

しかも…ノンくんがしてくれた。

この人、やっぱちさ兄の息子だなって思った。

何でも一通り出来なきゃ気が済まないちさ兄は…

どんな楽器もこなせる。

サックス吹いてるの見た時は、さすがにビックリしたなあ…。


「よし。だいぶ戻ったな。」

キーボードを片付けながら、ノンくんが言った。

鍵盤も出来るの!?って驚いたあたしに。

コードしか弾いてねーじゃん。ってさらっと言ったけど…

いや、あたしは鍵盤でコードを弾けって言われても、いきなりスマートに弾けません…。


それから、ギターの練習と言うより…特訓もした。

ノンくんと向かい合ってバッキング合戦したり。

普段、あたしはソロを弾く事はないんだけど。

ノンくんのソロパートをあたしが弾いてみたり。


「おまえ、なんでハイポジになると雑なんだよ。」

「えっ、雑?」

「急いでスライドさせ過ぎ。そこはもう少しゆっくりでも間に合うから。」

「…こう?」

ノンくんの言う通りにやってみる。

「もう少し…そ。それぐらい。」

「あー…なるほどね…あたしチョーキング入る前に少しカッコつけてるからさ。」

「それで急いでたのか。」

「うん。」

「ふっ。まずは基本。」

「…はい。」

そうだよね…

まず基本。

あたし、無駄に出来ちゃってたからな…

ずっと基本無視って感じあったし。

いい機会だ。

ちゃんとやっていこう。


「おし。もう一回頭から。」

「うん。」

ノンくんとカウントを取りながら曲に入る。

「裏から入るな。」

「うっ…」

「今んとこ一音少ない。」

「ひー…」


ダメ出しをされながらのそれは、随分と刺激になったし…

負けたくない。

そんな気持ちを強くしてくれた。


誰もが尊敬して憧れる神千里の息子であるノンくん。

出来ないわけがない。

ううん…

下手すると、それ以上の事だって出来ちゃうよ。

だって、今まで全力じゃなかったはず。

それが…これから本気になれば…


「……」

小さく頭を振る。

ノンくんがどうであろうと、あたしはあたしなんだ。

誰かと比べるなんて、意味ない。


…負けたくない。

ノンくんに。

じゃなくて。

自分に。

あたしは、ここまでしか出来ない女じゃない。

もっと出来るはず。

音楽も…


…恋も。

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