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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/24 08:40:34

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クリスマスイヴ。

昨日、沙也伽のご両親が来米されて。

予告通り、一か月間沙也伽と生活…のはずが。

あたし達、仕事を干されてしまって…

ちさ兄には。

『あ?来るなって言われた?だからどうした。どうにかしろ!!』

そうとだけ言われた。

…どうにかしろって言われても…


とにかく、沙也伽はご両親に用意された裏のビルにある部屋に移って。

あたしは束の間の…一人生活。

と、思ってたら…

「来ちゃった。」

何の連絡もなく…

母さんが来た。


「い…いきなりだね。」

「サプライズってやつ?」

「まあ…ある意味そうだけど…」

「せっかく来たのに、紅美、暗い。」

「……」

あたしはクッションを抱きしめてソファーに斜めに沈み込むと。

「…あたし、ダメダメなんだ…」

力なくつぶやいた。

母さんはキャリーケースを開いて、自分の荷物を出しながら。

「ダメダメじゃいけないの?」

笑った。

「…ボーカル、おろされた…」

「えっ?」

「ノンくんの方が上手いから…そうしろって…」

「……」

母さんはあたしの隣に座ると。

「それで、あっさり引き下がったの?」

険しい顔で言った。

「…ノンくんの歌聴いた時…震えたよ。」

「……」

「初めてだよ…あんなの聴かされて…もう、あたし、この人の前で歌いたくないやって思っちゃったのなんて…」

そう…

ノンくんが上手過ぎて…

あたしは、もうノンくんの前で歌なんか歌えないって思った。


「…なるほど…ダメダメね。」

「…でしょ…」

「まあ、最高のボーカリストの血が存分に流れてるんだから、当然と言えば当然だけど。」

「……」

「ノンくん、小さな頃から嫌な思いしてるのよ?」

「…え?」

あたしはクッションに突っ伏してた顔を上げる。

「あ、ついでにサクちゃんも。」

「…どういう?」


母さんの話は、こうだった。

ノンくんもサクちゃんも。

小さな頃からさすがに歌が上手くて。

幼稚舎の時はすでに目立って上手くて。

隣に並ぶ子達が、気後れするから、大きな声で歌わないように。

なんて先生に言われて…

ちさ兄が、キレた。

だけど、心優しい二人は。

「みんなと歌いたいから、同じようにする。」

と…。


初等部に上がると…今度は。

「メインは、桐生院くんに歌ってもらいましょう。」

みんなと同じように。じゃなくて。

ノンくんだけ、サクちゃんだけがメインになりつつあって。

それをやっかむ子も出てきたりして。

サクちゃんはわざと風邪をひいて、ちさ兄に怒られたり。

ノンくんは…声変わりで音程が取れなくなった。って、長い長い声変わりをしたり。

そのうち…

「音楽には興味ないから。」

二人ともが、そう言って…ちさ兄をガッカリさせた。


特に音楽に夢を持ってなければ…

いじめに立ち向かうほど、強い気持ちで守りたいとは思えないかもしれない。

蛙の子は蛙…なんて、それは蛙の子以外から見ると、羨望半分嫉妬半分で…

自己主張が強い小さい頃は特に…

嫉妬には耐えられなかったと思う。


それでノンくん…合わせる事を覚えちゃったのかな…


「早く俺に追いつけって言われたんだ…」

あたしがつぶやくと。

「悔しいって思うなら、出来るんじゃない?」

母さんは、あたしの頭を撫でてくれた。

「…ノンくんのレベル、相当高いよ…?」

「諦めるの?」

「…諦めたら…あたし、もっとダメになっちゃうよ…」

「だったら、頑張ればいいじゃない。紅美は昔から何だって出来ちゃう子だったから、打たれ弱いのよ。」

「…今、こそっとキツイ事言ったね?」

「そう?でも、何でも出来てたでしょ?」

「…うん…」

「母さんはねー…みんなに愛される姉さんに嫉妬してたわ。」

「…え?」

いきなり、母さんのカミングアウト。

「姉さんって…知花姉?」

「うん。何であの人ばっかり。って。でもね、姉さんは愛されるだけの事をしてたし、あたしは何もしてないクセに、愛されたいってばっかり思ってたの。それに気付いた時…あたしもちゃんと姉さんの事を認めて好きになれたし…自分のダメな面が分かった。」

あたしから見たら…

母さんは、愛されキャラに思える。

ちさ兄だって、みんなに厳しい事言うクセに、母さんには…ちょっと甘いよなあ?って思うもん。

…何か弱みでも握って…?


「紅美は、出来ちゃうから。たぶん、他の人の努力のそれより、頑張りが足りないんじゃないかな。」

「…グサグサくる…」

「ごめんごめん。でも、理由はそれなのよ。」

…思い当たり過ぎる。

だから…何も言えない。

あたし…本当、自分の才能に甘えてる…。

あたしよりノンくんが出来る人だってのは、解ってたはずなのに。

実際…思ってた以上の才能を見せ付けられて…へこんだ。


「…母さん。」

あたしは、母さんの腰に抱きつく。

「えっ…どうしたの…」

「…ちょっと…甘えたくなった…」

「…大丈夫よ…紅美。母さん、応援してるから。」

母さんは、あたしの髪の毛を耳にかけたり撫でたりして。

「紅美次第で、絶対ノンくんに追いつけるから。ノンくんは…敵じゃないわ。紅美の味方よ?」

優しい声で、そう言ってくれた。


…うん。

ノンくんは…敵じゃない。

あの歌を聴いて、脅威だと思ったけど…

敵じゃない。


いい意味でのライバルで…

仲間だ。


大事な…


仲間だ。

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