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ユキさんのブログ

新春すてきな奥さんがたまらん (〃▽〃)♡♡

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高校3年生 足音

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/12/01 00:34:44

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涼太はうちには泊まらなかった

監督と似てるとこがあるから
たぶん人の家に寝泊まりするのは
あまり好きじゃない
涼太の家に泊まりに行く人はいるけど
涼太がよそに泊まるのはあまり聞かない


一度、水木家のマンションに戻って急いで荷物をまとめて
紗江ちゃんとけいくんを空港まで送った

別れ際にけいくんは
少し寂しそうに私の頭に手を置いて


「大学…しっかり日本一つくれよ」


目をそらして言った


なんで大学の話?
って思った
どうせまたすぐ帰ってくるのに

違うか

けいくんに会えるのは
次がいつかなんてわからない

私にはいつでも会えるような感覚が
どうしてもぬぐえなかった


それから涼太を家に送って
帰った


時間も遅かったし
シャワーしてすぐにベッドに潜り込んだ

「先生」
「ん?」
「ありがとう」
先生はただ笑って
いつも通り私を抱っこして眠った


今朝は眠かったけど
紗江ちゃんと約束した以上
涼太にちゃんと食べさせなきゃ!

張り切ってお弁当を作った





「で?」
「みえちゃんが作ってくれた
 紗江が帰るまでご飯食べに来いって」

チーン…

まさかの我が母にやられた
しかも冷食無しの
彩り綺麗なお母さんのお弁当
なんか花咲いてるしね

「かな、それちょうだい」
「いいって…帰りに鳩にでもやるから」
「鳩も迷惑」
「じゃあかなの弁当ちょうだい
 俺今日パンだしご飯食いたい」
「なおくん…」
「鳩が腹壊したら可哀想だしさ」
「優しいねなおくん」
「お前に優しいんじゃなくて鳩にだろ」
「なお、こっちやるから」

涼太は結局、確実に美味しいお母さんのお弁当はなおくんにあげて
私が作ったお弁当を食べた

「うっま!」
「なおベーコン巻きだけちょうだい」
「じゃあかなの玉子焼きくれ」
「いやそれは…枝豆やるから」
アスパラベーコンは食べたかった涼太


「もう始まったな」
「決勝、野島なんだろ?」
「うん」
お弁当を食べながら
後ろの黒板の上の時計を見て
「野島か」
「野島くらいだよな
 2年生主体だったのって」
「海大は関東大会決勝で負けてたな」
「野島ってさ…」
みんな食い入るように私を見る
なにか重要なこと言う予感?
どうしよ…しまむらあったって言おうと思っただけなのに
言えない

「つ…強いよね」

「……」
「さ、次体育だ」
「着替えよ」
なに分かりきったこと言ってんだって空気

それから五時間目に体育をして
六時間目に公民で
放課後は文化祭の準備
ホームルームが終わってクラスのみんなはそれぞれのポジションに就く

「かなどこ行くんだ?」
「トイレ」
最近は一人でトイレに行けるようになった
高3になってやっと

1組2組3組階段トイレ4組5組6組
トイレは真ん中にある
7組8組は階すら違う

なのになぜか
「二階のトイレで何してんの?」
7組のちはちゃんに会った

「四組でバスケ部三年の集い
 文化祭でパスタ屋するんだって」
「サッカー部のうどん屋は?」
「あれがなくなって
 うちと料理部のお弁当屋さん」
「なんか楽しそう」
「1組芝居やるんでしょ?」
「うん!見に来てね…」

「赤ずきんちゃんと七ひきの子ヤギ!」

「……コラボ?」
「衣装とか本格的だよ!
 三浦ちゃんたちめっちゃ上手いの!」
「かなも出るの?」
「でるよ!でもみきと圭吾がさ~」
「クラス違うもんね」
「だから呼び込みと前説」
「前説?」
「2人でケミストリーやるんだって」
「あぁいいね上手そう」
「ちょっと、我慢できない待ってて」
個室にかけこむ
「どうぞごゆっくり
 かなが楽しそうでわたしゃ嬉しいよ」

トイレは左右に4つずつ
和式ばっかりで1つだけ洋式
私は洋式の方が好きだった
足に跳ねそうで…

トイレに入ったらあれでしょ?
脱いで座るでしょ?
そればっかりは親にも彼氏にも親友にも見せれない
気の抜けた間抜けな姿に思えるんだけど

外にドタドタと足音
この音はきっと後藤だ

足音で部員を嗅ぎ分けられるレベル
絶対正解

『ちょっと後藤!ここ女子トイレ!』
やっぱりね
『そこには発情しないから安心しろ!』
『はあ?!何言ってんの?!』
ほんと何言ってんの
入ってこないでよ
引っ込んじゃうじゃん

待って

何急いでるの

こんなとこまで


『かな!!』

なに?
出れないんだけど


やだ

わかっちゃった


こんなとこまで来て
そんなに焦って知らせたいこと


たった教室三つ分
そんなに息切らして

廊下は走っちゃダメだよ




『負けた…』




そんな報告を
私はこんな間抜けな姿で

聞いてしまった




へなちょこ達の顔が頭の中をぐるぐるまわって

でもそれはみんな笑ってる私の大好きな顔で


泣かないで



その瞬間を
一緒に受け止めてあげたかった


監督


大丈夫?



誰も
選抜には出れるし
なんて気楽な慰めは言わなかった

負けることを一番恐れているのは
他の誰でもない

負けたことのない


私たちだった



文化祭の練習中
気丈に普通に振る舞うことも出来なかった

どんな気持ちで最終回の最後の一球を迎えて
終了のサイレンを聞いて

バスの中の無言の雰囲気を思い浮かべると

泣きたくなった



外は暗くなって
最終下校の放送が流れた時だった


「1組~そろそろ帰れよ」
見回りに来たのは伊東先生だった
被服室の終わった衣装係は戻ってきて
背景係も片づけていた

「栗原…」

伊東先生はポンと頭を叩いて
続けて野球部の頭も叩いた

試合が終わったら
職員室に報告の電話を入れる
私も何度か入れたことがある

こみ上げる涙を我慢するのが大変だった


野球部は誰も話さなくて
静かだった


それは帰り支度が終わって
今もう電気を消そうとした時だった

廊下を走ってくる足音は
上靴は履いてない音で


みんなそれに気づいて音の方を見た

そんなに走ってこなくていいよ


「かなさん!」


そうだ
私が言ったんだ


『私が一緒に泣いてあげる』


『じゃあかなさんに会うまで
 泣かないで頑張る!』


「おおくん!」


我慢してたのがわかった

おおくんも
私も


おおくんは可愛いけど
私よりは大きい

そんなおおくんを抱きしめたら
おおくんは体が震えて


私の涙も我慢をやめて流れ落ちた


覚悟はやっぱり


出来てなかった



また
青空に描くアーチが

閉じた目の奥に


見えてしまった

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コメント27

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  1. ジェニーさん(32歳)ID:5704048・2日前

    今さら…
    わたし、この話はユキさんの実体験かと思ってたら、カテゴリー分けに小説って書いてある!(*´-`)
    そうだよね、こんな実話あったらドラマになってるよね。
    でも、ドキドキきゅんきゅんしながら続きまってまーす!

  2. ユキさん(32歳)ID:5694449・3日前

    モモカさん
    うちエリンギも巻くことにした!笑

  3. ユキさん(32歳)ID:5694447・3日前

    リサさん
    我慢してたよね(´;ω;`)
    約束したからね
    パワーどころか脱力感を与えてしまった<(_ _)>

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