2つの舟

胸が痛いです

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/11/29 20:19:02

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翌朝、いつも通り学校を終え、病院へ向かった。

病院の多目的ホール。
グランドピアノがあり、そこでクリスマス会で弾く曲の練習をする。

伴奏だけではなく、私も一曲演奏しなくてはならない。
悩んだ末、ベートーベンの悲愴にした。

華やかなクリスマスソングではなく、私にぴったりな深い悲しみを含んだ曲。
何度も弾いているので、2.3回練習すればいい。

私は悲愴を弾き始めた。
暗譜で弾けるが、一応楽譜を目で追いながら集中して弾いた。

ベートーベンが難聴になり出し、その頃の深い悲しみを表現している曲なのに、なぜか心が穏やかになっていく。
悲しいという感情は、私だけのものではない。
どの時代も、誰もが乗り越えてきた事なのだ。

弾き終わり、楽譜を閉じる。

次の練習曲は、いつかのメリークリスマス。
入院中の患者さんが歌う曲だ。

普段邦楽は聞かないが、出し物の曲と聞いてCDを借りた。
この曲も悲しい。

譜面をピアノに置いた時、遠くから拍手が聞こえた。
顔を上げると、ホールの入り口付近で、笑顔のDr.が手を叩いている。

「ピアノだけは上手いな。」

普段の軽口。

「だけは、は余計ですよ。」

私も普段通り、にこやかに答えた。
大丈夫、出来る。

「クリスマス会、俺は居ないけど宜しくな。」

そう言って、Dr.は扉から出て行く。

「はーい」

と、返事をしながら、白衣の背中に、振り返れ、と願う。

Dr.は振り返らず、出て行った。

此の期に及んで、まだ何かを求める馬鹿な私。

私は俯いて、小さく溜息をつく。
そう、これでいい。

そう思った瞬間。

また扉が開いて、外の光が差し込む。

「お前のピアノは人を感動させる力がある。頑張れよ。」

Dr.が顔だけ覗かせて言った後、また扉は閉ざされた。

もうダメだ。

ねぇ、Dr.
大好きだよ。

いつも自信をくれてありがとう。

なんで結婚してるの?
なんで私よりずっと歳上なの?

私は幼すぎて、この後暴走する。

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