2つの舟

胸が痛いです

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/11/26 11:11:49

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翌日、病院を訪れた。

看護師さんに会い、クリスマス会の日付、ボランティア内容、メンバーを聞いた。
Dr.は他の病院に行っているそうで、不参加らしい。

ホッとした気持ちと、残念な気持ちが入り混じる。

私は表情を変えず、

「楽しみにしてますね。ピアノの練習をしに、また明日来ます。」

と看護師さんに伝え、立ち上がる。

看護師さんは、

「待ってるわね。」

といつもの優しい笑顔で頷いた。
毎回変わらずホッとする。
ありがたい存在だ。


帰り道、看護師さんから受け取った資料を読みながら、玄関ホールを歩く。

「合唱曲を入れて4曲かぁ。」

と、独り言を呟きながら。

その時、どん、と身体に軽く衝撃を覚えた。

なんだ?
私は資料から顔を上げる。


目の前に笑顔のDr.

「悪い、前を見ていなかった。」

前にも聞いた、出会った時の言葉。

私は以前のような無表情ではいられない。
心が生きているから。

何で現れるんだ。
諦めようとしている時に。

きっと泣きそうな表情をしているだろう。
言葉が見つからない。

Dr.は笑いながら、前と同じように、自分の胸に手を当てる。

「お、泣くほど痛かったか?俺も結構痛かったぞ。」

私よりずっと年上なのに、無邪気で透明な心が眩しすぎて、私の心は荒んでゆく。

素直な人の前で素直になれない。

「泣きません。すみませんでした。」

私は何とか冷静に伝えた。

Dr.は、

「謝るな、俺が悪かった。でも資料見ながら歩くと危ないぞ。」

笑っている。

あぁ、その笑顔。
どうしてこんなに好きなんだろう。

何も言わない私にDr.は続けて、

「最近顔出さなかったな、元気にしてるのか?」

と聞いてきた。

優しさがキツい。

「はい、Dr.が心配するような事は何もありませんよ。」

私は素っ気なく答えた。

「心配はこっちが勝手にするもんだから、気にしなくていいんだよ。お前が元気ならそれだけで。」

笑顔を崩さない。

優しい目。
優しい口元。

Dr.はいつも私に優しい。
どうしてこんな私の事を見守るの?

よく分からない怒りがこみ上げる。

もうやめてよ。
求めたら、何もしてくれないくせに。
辛いだけなんだよ。

大人は何もしてくれない。
大人は結局逃げて行く。

涙が頬を伝った。
俯いて立ち尽くす。

「元気、ないのか?」

Dr.は私に一歩近づいた。
私は一歩下がって、Dr.の目を見て言った。

「お願いだから、優しくするのやめてよ。遠くから、触れられない人から優しくされても辛いだけなんだよ!」

言い切った後、走って病院の外に出る。

冷たい風が熱くなった心を冷ましていく。

私はやっぱり子供だ。

結婚している人に、好きになってはいけない人に、遠回しでも、想いを告白してしまった。

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