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高校3年生 教えてなかったこと

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/11/08 15:08:41

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久しぶりに行ったグラウンド

アップを始めていたみんなは
精鋭部隊のサプライズ登場に
嬉しい笑顔が一気に咲いて

権兵衛は嬉しさのあまり
コスモスを摘みに行ってしまった

権兵衛

ピンクも白も可愛いけど

私はちょっと大人っぽい

茶色のコスモスが好きなの


シックで大人っぽいのに
甘いチョコレートの匂い


ほら

誰かに似てない?



マイスウィートダーリンに





「野島商業か〜」
「あんなねこだまし作戦
 そう簡単に決まんないからな」
今大会の一番大きな壁は
トドもよっちも引退したのに
野島商業だった

引退する前の春季大会
野島商業の低めギリギリを投げる投手は
後藤が上手いことボールとストライクのボーダーラインを上げて
低めを投げられなくなったから
簡単に打ち返せて私たちは勝てた

あのピッチャーはまだ2年生
エースだった

私が書き溜めた低めくんの配球表と
監督はもう何日も前から睨めっこしていたらしい

パワーで打ち返せるもんじゃなく
あれを打ち返すには技術が必要だった
だから手っ取り早く
1回の攻撃のトップバッターが
低めを投げれないようにジャッジを操ったのが
私たちのねこだまし作戦だった

グラウンドのバッティング練習は
アッパーで打つ練習
バッティングピッチャーは低めにボールを集めていた

涼太とみきはブルペンでピッチング練習を見ていて
バッティング技術トップレベルのなおくんがすくい上げて打って見せていた

「さすがなおくん」
「大学行ったら即戦力
 金子監督言ってた」
「そうなの?」
「足も速いし言うことない
 強いて言うなら…」
「強いて言うなら?」
「マイペースが問題」
「あぁね」
「太田は何してんだよ」
「アッパースイングより大事なことだから
 ほっといてやって」
「はあ?」

おおくんは後藤が呼んで
三塁側ベンチで話していた

「説教?」
「元キャプにしか出来ない説教」
「何だそれ」

「負けても大丈夫だって」

おおくんが一度だけ腕で顔を拭いたのは
汗が流れたからだよね

「たぶんな…」
「え?」

「お前たちがやってきた不敗更新より
 それを引き継いだこいつらの方が
 だいぶ…重いはずだ」

監督は少しため息をついて笑った


不敗を作った私たちと代変わりして
周囲の期待はそのまま残ってるのに

絶対的なエースがいなかった

技術は間違いなくトップレベルだけど
技術だけで勝てなくなる上位戦
そこに必要な別の技術が
このチームにはどうしても足りないように思えた

その頼りなさが
3年生はみんな口にはしないけど
不安だった

プレッシャーに打ち勝つ技術と

負けた時に立ち上がる技術を


私たちは教えるのを忘れたかもしれない



「後藤は強くなったな」
「うん」
監督は三塁側で話す2人を
頬杖ついて眺めていた

「いっそのこと俺病に伏せるか」
「はあ?」
「後藤もお前も、あれで強くなった」
冗談ぽく笑って
監督はグラウンドに出て行った

置きっぱなしのファイル
私が書いた低めくんの配球表と
今大会の組み合わせ表



「ん?」

おおおおおおお

メイン会場名がステキ

『野島市民球場』


練習は調整メニューで19時には終わった
それから出発に備えて準備を始める
「かなさん部費はいくらいるんですか?」
「3万くらい?
 たぶん使わないけど」
「かな、謝礼は?」
「1万え~ん」
「封筒」
「自分でやってよ」
「たくちゃん習っとけ」
「たくちゃんエビグラタンは?」
「うちの冷凍庫入りきれないんだけど」
「そんなにあるの?!」
「かな、今日の夕飯決定」
「いえーい!」

何?最近のこのパターン

電気の消えたグラウンドと本部
裏の部室棟


「あ、太田」

「はい」

監督はおおくんを呼んで

「お前エビグラタン好き?」
「普通」
「適当にうそついてアイツら帰して来い」

「たくちゃん4つある?」
「あるある、10個くらいある」

おおくんも一緒に行くことになった
監督はこう見えて心配性だからね


たくちゃんちについて
またフランスパンを切らされるたくちゃん
始めてきたおおくんは何もない部屋を見渡して
私はやっぱりこの匂いを嗅ぎたかった

寝室を開けると真っ暗
ベッドの上のライトをつけると
ステンドグラスがカラフルに暗闇に色を塗って
本の匂いと柔軟剤の匂い

野球の本が増えて
本しかなかった部屋に
写真が飾ってあった

泥だらけのユニホームを着た精鋭部隊がカッコつけて笑った
甲子園の写真
泣き顔の金メダル

「出来たよ~」

こたつの上に並べられた熱々グラタンは
底に敷くものがないから
タオルハンカチだったり新聞だったり
たくちゃんの意外な雑な男っぽさ

「おおくんこれ都会のエビグラタン」
「味わって食えよ」
「まだあるからおかわりしていいよ
 あの人要らないって言ってるのに
 定期的に送ってくるから…」
「愛されてるねたくちゃん」
「たぶん愛されてるのは栗原さん」

「あ、そうだ
 図書カードなんか買った?」
「お前大貴にやっただろうな」
「やったよちゃんと」
「ねこばばしなかったんだ」
「なんかね…フェルマーのなんとかと
 現代数学のなんとかって
 意味わかんない本買ってた」
「そりゃお前にはわからんだろうな」
「フェルマーの最終定理?」
「知りません」
「面白そうって思ったのあった
 フェルマーのやつ」
「そもそもフェルマーってどなた」

「太田、かなの読書感想文な」
「あぁ表彰されたやつですか?」
「あれ彼氏が書いた」
「はあ?」
「何バラしてんの…」

エビグラタン食べながら
何でもない話だった

「かなさん、あの角のパン屋
 潰れるらしいですよ」
「うっそ、お母さん好きなのに」
とか
「おおくん昔バッタ投げられて泣いたよね」
「投げたのかなさんでしょ…」
とか

なのに急にぶっこむ

「太田」
「はい」

監督は意を決するように
言葉を選ぶように
小さなため息をついた

これは新幹線で私に向けたのと同じ顔

ずっと言葉探してたでしょ


「監督、私が言うよ」
「かな…」

一緒に戦う監督が言うべきじゃない


「おおくん」
「はい」


「青藍は…」


あ、わかっちゃった

監督これ言うのツラかったよね



「おおくん、青藍は負けるよ」





おおくんも私と一緒


覚悟しとかなきゃいけない



負けた後に立ち上がるために



それだけは
教えてなかった


上っ面の大丈夫は言えなかった


言えるのはホント



「負けても大丈夫だよ」


これだった

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コメント16

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  1. ユキさん(32歳)ID:5559617・11/09

    花鈴さん
    バッタ投げて泣かすくらいの信頼関係
    かなちゃんが言ってあげる言葉だよね
    おおくんにどう響いたのか…
    それはまた次回(・ω・)ノ

  2. ユキさん(32歳)ID:5559613・11/09

    フローレンスさん
    おおくんはさ
    監督が選んだ立ち上がれるキャプテンだから
    きっと大丈夫
    権兵衛兄弟はあれだよね
    くじけるのは3分くらいで終わりそう笑
    てか長いこと落ち込んどけないタイプっぽい笑

  3. ユキさん(32歳)ID:5559609・11/09

    ローラさん
    何だ?
    コメ返したやつ…私消したかもΣ(・ω・ノ)ノ!
    たまにやるんだよね…ソーリー<(_ _)>

    そのパターンいいね!
    権兵衛みんなにコスモスをプレゼントして元気づける笑
    泣きながら『僕っちはもう負けるのは嫌だーー!練習するぞーー!』みたいなさ(´;ω;`)

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