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恋〜いつか出逢ったあなた〜

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/10/19 23:32:09

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「……」

知花を送るために車を出して…

最初の信号で停まった瞬間、アームレストに肘を乗せてる俺の手を…知花が握った。

…手を握られただけなのに、少し驚いて…瞬きを何度かしてしまった。

あからさまに知花を見る事はせず、信号が青になってゆっくり発進すると同時に…

手の平を返して…知花の指に絡めた。

「……」

「……」

思い出せないなら、そのままでいいんじゃないか。

知花にそう言われた。

それを聞いた時…俺は、知花は誰かから何かを聞いて知ってるんだと思った。

その瞬間、何とも言えない感情が…俺の中に渦巻いた。


…知花は、俺を思ってそう言ったんだ。

分かってる。

俺のために、なんだ。

…だが…

それは、知花が今まで俺に『して欲しかった』と訴えた事と、同じじゃないのか?

なぜ話してくれない、なぜ教えてくれない、と…

泣きながら俺に訴えた、あれと同じじゃないのか?


知花は俺の事を知りたいと言った。

それと同じように…

俺も、自分の事が知りたい。

それが…

知花が俺を思って言わない何かだとしたら…余計気になる。


「明日は、ご飯どうする?」

家が近付いて最後の信号で停まってると、知花が小声で言った。

「…明日は少し遅くなるからいい。」

「そっか…うん…分かった。」

「……」

「…千里?」

「……」

「…どうしたの?」

はっ。

「あ…いや、なんでもない。」

信号が青に変わって、ゆっくり発進する。

…最近、気を抜くとこんな状態だ。

記憶どうこうじゃなくて…

脳の病気とか…精神が不安定なのか?

…まあ、安定はしてないよな。


「…記憶の事、気になるの?」

左折をすると、桐生院の屋敷が見えて来た。

「…気にならないと言えば嘘になる。」

「そう…だよね…」

本当は…そんなもんじゃない。

すごく気になってる。

今すぐ、じーさんの家に行って…確かめたい事だらけだ。

だが、今は…とにかく…

「モヤモヤしちゃうかもしれないけど…今はライヴに集中しなくちゃ。」

「…分かってる。」

「昔の事なんて…もしかしたら、いつか思い出すかもしれないし、記憶がないって言ってたけど、本当に普通に忘れてるだけかもしれないよ?」

「……」

突然…黒い気持ちになった。

知花はフォローしてくれてる。

それだけだ。

他意はない。

そう思うのに…

「おまえに何が分かる。」

気が付くと…俺は口にしてしまってた。

「…え…」

「ガキの頃、アズと一緒にいた事を思い出したいだけなのに、それが分からないんだぜ?」

「……」

「おまえは義母さんの腹ん中にいた時の事さえ覚えてるっつってたのに、俺は9歳の頃の事も覚えてねーなんて…」

門の前で車を停める。

「俺は本当に神千里なのか?神家の人間なのか?って…自分が分からなくなるんだ。」

「千里…ごめん…そんなつもりで言ったんじゃない…」

知花は両手で俺の腕にしがみついたが…

「…早く降りろ…」

俺は…それをそっと外して、ハンドルに寄り掛かった。

「…このままだと…俺はもっと酷い事を言いそうだ…」

「……」

「頼む…降りてくれ…」

「…言ってよ…」

「…嫌だ。」

「言って。あたし、千里を受け止めた」

「頼むから!!」

「……」

俺の剣幕に、知花は肩を揺らせて。

「…あたしには…何の力も価値もないの…?」

小さな声でそう言った。

「……」

「千里と…分かり合いたいのに…」

「…じゃあ、おまえは誰かから聞いた何かを、どうして俺に言わない?」

「…っ…」

あえて…知花の顔は見なかった。

息を飲んだ時点で図星だと分かったが…

それが本当だと思いたくなかったのかもしれない。


「誰に何を聞いた。千幸か?アズか?あいつらは俺の何を知ってた?」

「千里…」

「…頼む…これ以上俺が酷い事を言わないで済むよう…降りてくれ…」

ハンドルに頭を乗せて…絞り出すような声でそう言うと。

静かに…ドアが開いて。

知花は無言で降りてドアを閉めた。


「……」





バカか……俺は。

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