バイセクシャル恋愛日記その2

Side K

  • 記事数 279
  • 読者 188
  • 昨日のアクセス数 296

黒いシミ

しおりをはさむ

テーマ:恋愛 > 同性愛

2016/10/18 01:28:05

  • 24
  • 0

もしも同棲ができたら、と、妄想をして、最近はよく夕飯を作るようになった。

こんなのを作ると喜んでもらえるだろうか、とか、きっとこんなの好きだろうとか考えながら買い物をするのも楽しい。

もちろん今はまだ1人で食べるから、途端に虚しくなるんだけれど……。

その日も仕事の帰りに少し遠いけれど食材が豊富なスーパーによった。
輸入食材も取り扱っていてなかなか楽しく買い物を済ませ、外に出た。

「ケイ?!」

その独特のイントネーションに多大なる嫌な予感を感じで振り向くと、見る影もなく老け込んだアイツがいた。

『アントニオ……』

レイコ先生の夫だった……。思い出したくもない過去のこと、自分にはバレていないと思って、夫婦で共謀して色々とやってくれた男。

走って逃げたいところだったが、それもしゃくだった。何食わぬ顔をしたい。

「Ohなんて事だ。こんなところでケイに会えるなんて……」

『はぁ、お久しぶりです。』

ただ老けているだけではなく、明らかに心身ともに不健康そうだった。
眼窩は落ちくぼんでいて、痩せてしまっている。
顔色は最悪で黒ずんでいる。

「ケイ、お願いだ。レイコに会ってくれないか?」

『嫌ですよ。なんでですか』

「ケイが居なくなってしまって、彼女は壊れてしまったんだ。
ケイがあってくれたら、僕は元の彼女に戻ってくれると思う。」

『子供産まれたんじゃないんですか』

「彼女には育てられなかった。だから、今はお母さんのところにいる。」

コンサートで聞いた、あの狂ったような演奏を思い出した。やはりあの頃からもうおかしくなっていたのだろう。

だけど、1ミリも同情の気持ちは湧いてなど来なくて、なんなら今買い物袋のなかにある、冷凍ムール貝の心配をしているくらいだ。

『自業自得ですよ』

「なに?」

『自業自得わからないですか。貴方一体何年日本にいるんですか。
自分たちのやったことを忘れたんですか?』

自分だってわかって許していたくせに、棚に上げて責めてしまう。

あれがなければ、まだ自分はバイオリンを弾けていたかもしれないし、第一ユミに後暗いところを隠さなくて済んだのだ。

「どうか、私達を、助けてください。お願いだから。」

泣きそうな顔で手のひらを合わせるアントニオが、さすがに気の毒になったが、どうしてやる気もなかった。

『それより、アントニオ、肝臓が悪いんじゃないんですか?』

「かんぞう?」

『liverですよ。その顔普通じゃないですよ』

「ああ。ケイはドクターになるのだったね。ドクターになったのかい。」

勤務先をばらしたくもなかったから、その事は黙っていた。

『病院にいったほうがいいですよ。』

「身体はあっちこっち壊れてる。病院に行かなくてもわかる。それよりもレイコのほうがかわいそう。会ってあげてください」

『お断りします。さようなら』

といって、早足で車に向かった。
自宅の反対方面の出口から出た。自分に出来ることは何も無いし、会う気もない。

そもそも元々おかしかったから、年端もいかない自分にあんな残酷な事ができたのだ。

どうにもならないのだ。多分このふたりは自分のなかの唯一の黒いシミで、患者さんたちの命とは比べ物にならないくらいに自分の中で軽ずることが出来る存在なのだ。

むしろ死んでくれれば、自分の心のなかのシミがなくなってせいせいするのでは無いかと思うほどだ。

しかし自宅に近づくにつれて、妙な心配が募ってきた。

もしもアントニオが今後も自分に付きまとう事になったら、ユミにあの事がバレてしまうのてまはないか。

隠しつづけて他からバレるのも避けたいが、そもそもバレる事自体も避けたくてたまらない。

今日こそ過去を消したいと思ったことはなかった。

2度と会いたくない。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

12/3 編集部Pick up!!

  1. 彼氏の離婚話が進まずメル友状態
  2. 「婚約指輪」を貰えず自己嫌悪
  3. 同窓会は「品評会」のイメージ

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3