バイセクシャル恋愛日記その2

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テーマ:恋愛 > 同性愛

2016/10/16 00:08:06

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遺書という文字と、自分の名前が宛先として書いてある封筒を渡された瞬間、みゆきちゃんの父親がひったくって、それにライターで火を付けようとした。

「こんなものはあってはいけないんだ!こいつは自殺なんかじゃない。交通事故だったんだ!」

「お父さん!スプリンクラー作動しちゃうんで……」

伊藤先生が控えめに注意すると、粉々に引き裂いてしまった。

証拠隠滅とかで、警察に怒られるのではないか、と、やけに冷静な事を考えていた。

自分が病院についたときには、もうすでにみゆきちゃんは息を引き取っていて、今はもうこのストレッチャーの上で、全身を白い布に覆われてしまっている。

不可解な箇所で急ハンドルがとられていて、電柱に激突したのだそうだ。

遺書がでてきた事から、自殺だろうし、最悪な事に他人を巻き込んでいる。

おそらくみゆきちゃんが、ドライブ中に助手席からハンドルを取ったのだろう。

父親は「とんでもないことやりやがって」などとブツブツいってて、みゆきちゃんのことを愛していないのか、あるいは自分を保つためにわざと憎まれ口を叩いているのか。

母親は伊藤先生と自分に泣きながらひたすら謝っていた。
「折角救ってくださった命を、こんな形で無駄にしてしまって申し訳ありません」と。

骨髄のドナーとなった姉は、放心状態だった。

父親が遺書を破ったことで、読むこともなかったが、大体の内容の察しはついた。

だけど、別にこれは自分のせいじゃない。自分は間違ったことなんてしていない。

持ち物の中に巻髪のウイッグがあって、ドキリとした。

(可愛いウィッグ買うのでデートしてください)

少しずつ、後悔に似た感覚が滲み出てきた。

もしも手紙に書いてた連絡先に連絡していたら、彼女は死ななかっただろうか。

もしもデートしてたら、彼女は死ななかっただろうか。

もしも早めに、強制的に精神科に回していれば、こんな事にならなかっただろうか。

帰ろうとすると、伊藤先生が「今日はごめん、ありがとう」といって、缶コーヒーを買ってくれた。
喫煙所に場所をうつして、二人でコーヒーを飲んだ。甘ったるくて、すこしだけホッとする。

「中村先生、遺書の事は結果的にご家族と自分しか知らない。多分、誰にも言わない方がいいと思う。」

『はい……。』

「俺もこんなのは初めてだよ……寛解したはずの患者さんに自殺されるなんてな。超ショックだ。」

『もっとこうしておけばって、そんなことばかり考えてしまって……だけど、解決策を考えてもそっちには落とし穴があって、まったく正しい方向がみえない。』

「考えない事だよ。もうどうともならないんだからさ。」

確かに自分の領分ではないことだけど、やるせなさ過ぎて考えずにはいられなくて、モヤモヤが止まらない。

『自分、前はなんていうかかなり遊んでて……相当チャラチャラしてたんですよ。
あ、今はね、1人だけなんですけどね。
そのチャラついてたのが、まだ抜けてないとかなんですかね……』

「それは無いと思うよ。中村先生真面目そうに見えるよ。」

『そうですか……』

「あえていうなら、逆に女らしい格好してみたらどうかな。逆にって表現もおかしいけど。」

『女装にしかなんないですよ……』

そういえば今、そういった下着をつけていたっけ。
ああ、ユミに会いたいな。だけど、今甘えたり逃げたりはしてはいけないと思った。

とりあえず今日の所はユミを封印しよう。

『仕事はもう終わったんだけど、ちょっと今日はぶっちゃけ凹み過ぎてて、会えそうにない。
ごめんな。返信不要。』

とメールした。あの子は賢い子だから、きっと察してくれるだろう。

自宅に帰って、服のまま布団に潜り込んで、目を瞑ると、やっぱり生前のみゆきちゃんの顔ばかりが浮かぶ。

担当の患者さんが亡くなる事はあっても、こんな理不尽な結果になったことは無かった。

どうしたら良かったんだろう。

思考は堂々巡りで、なにも結論なんて浮かばなかった。

ただひとつ確信できることは、自分を思ってくれるのはユミだけで充分で、彼女のことだけは1ミリも傷つけたくない。それだけだった。

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