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ユキさんのブログ

新春すてきな奥さんがたまらん (〃▽〃)♡♡

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高校3年生 近大の土の色

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/10/15 11:58:50

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  • 22

泣き出しそうな顔で
カルテの名前を撫でた奏さん

そんなに喜んでくれるなんて



嬉しいよ



大阪から帰ってすぐ

お嫁さんにしてもらったんだよ

そしたらビックリするくらい

夜も眠れるし
発作も起きない


だけどね

時々は苦しくなるの

時々は夜が怖いの

だからまだ
奏さんのくれる薬が必要だよ

この病気は

治らないのかな


だけど
先生がいるから平気なの

先生が一番の薬だから


そんなに喜んでくれて



ありがとう




「しかも一人じゃないし…」
「涼太とカズくん」
「名前は聞いてません…
 頓服薬ヒロリンは?」
「ヒロリンは来ないよ」
「元気?」
「この前会ったけど元気だったよ」

「これ?!」

「キャ!」

奏さんおもむろに私の左手に飛びつく

「おシャレさんかよ…」
「は?」
「かなちゃん…」
「はい?」
「俺はバツイチでも構わない!」
「はあ?」

「俺も~!」
「入ってくんなガキんちょ」
「おっさんの気持ちはよくわかった」
「お医者様と呼べ…」
「俺、元カレ様」
「はあ?!」
「こっちは幼馴染様」
「……」

「なんか…負けた…」

「奏さんも元気そうだね」
「たった今元気じゃなくなりました」
「お薬一年分ね」
「出せる量は決まってます」

お医者さんは私の手首を握って
ドクドクなる数を数えて
下まぶたをあっかんベーして
首を触って

「発作は?」
「ほぼない」
「ほぼってことはあった?」
「この前ちょっとだけ…
 でもすぐ直ったから大丈夫」
「薬飲んだ?」
「いや」
「あぁ…はいはい
 もうどっちの頓服でもいい
 俺には出来ないすご技だし…
 いや1人は治療薬か…」
「なにぶつぶつ言ってんの」

「一応二週間分で出してるから」
「無くなったら川下先生に言えばいい?」
「うん…
 あ、いや電話して?」
「え?
 そんなしょっちゅう大阪来れないけど」
「この薬ね…お、俺しか出せないから」
「そっかわかった」

「お医者さ~ん職権乱用」
「かな、絶対智くんでも出せる」
「そうなの?!」
「製薬メーカー書いてあるじゃん」
「なんならけいくんでもイケるかも」
「何者だ…」

コンコン

「椿先生失礼しまーす!」

スーツ着た人が入ってきた

「グランドパークのチケット
 持ってきました~!」
「そうだった…」
「ん?椿先生二枚しかとってないけど」

「あ、椿先生退勤時間ですよ
 午後休でしたよね?」
看護師さんが言って
椿先生は白衣を脱いだ

「行く?」

なんか疲れ果てた顔でチケットを見せて

「え?いいの?」
「いいんだよ…
 2人きりで行くはずだったけど…」
「なんでかなが
 一人で来ると思ってたんだこの人」
「病状知ってんだろ精神科医」
「言われてみたら…」

「え?奏さんも行こうよ
 お仕事終わったんでしょ?」
奏さんは2枚のチケットをくれようとした


そんなこんなで出発!

「かなちゃんが助手席!」
「いいじゃん俺でも~」
カズくんが隣に乗って
涼太と私が後ろに乗った

「ねぇそこって何あるの?」
「遊園地…とかショッピングとか…」
「さすが都会!」
「なぁ腹減った〜」
「なんか食べたい!」
奏さんの車に乗せてもらうのは2回目
こんな都会のど真ん中を
すいすい運転してるのは
ちょっとだけカッコいいって思ってしまう

「ねえ奏さん」
「わ!近い!」
座席の後ろから乗り出したら嫌な顔され
「臭い!」
「はあ?」
「幸せ臭い…」
「泣くなお医者様!」
「キャラ崩壊してない?」
「なんかうまいメシ〜」
「あぁはいはい」

病院から少し離れて
奏さんが車を停めたのは
「うそ…」
「なんで大阪まで来て…」
「吉牛?」
「ちがうこっち!」
隣の
「ハンバーグ屋
 多分ここが日本一美味い
 島根と大阪しか知らないけど」
「島根?」
「実家は島根
 島根生まれの島根育ち」
「ふ〜ん」
「興味なさそう」

ジュージュー言いながら出て来たまん丸のハンバーグは確かに美味しかった
「あれに似てる、ミートショップ山田の
 焼くだけのやつ」
「そうなんだ、今度買って帰ろ」
「紗江コン涼太」
「ミートショップ山田ってどこだよ…」

お腹いっぱいになってまた走り出した車
「やっぱドライブはこうじゃなくちゃ」
「奏さん、ガムいる?」
「あ~ん」
「その何とかパークどこあるんだよ」
「京都の一番手前」
「カズ、結局京都じゃん」
「全然オッケ
 あの旅行は寺院仏閣しか行ってないし」

「京都…なの?」

京都が思ってたより近かったのと

「お医者様、ちょっと近大寄ってくれない?」
涼太には考えたことがお見通しだった
「近大?何だよ俺の母校見たいの?」
「は?」」」

目的地だったグランドパークは通り過ぎて
奏さんは別に何も聞かずに近大に行ってくれた
母校だから?迷うこともなく
高速を降りるすぐ手前

「あれ…?」
「あれ野球部だな」

大きな扇状のグラウンドが少し下に見えて
そこに小さく人影が走り回っていた


奏さんは何の迷いもなく大学の方じゃなくて野球場の横に車を停めて私たちを降ろした

「ごゆっくり」


フェンスの外から見ただけで
目の奥が重くなって
3人でしばらく見入った

「町子はここに来るのか」
「そうだね…」
「デカいな~」

「俺もう見たしヤブ医者と遊んでる」
ジッとグラウンドを目に焼き付けて
カズくんは車に戻った

「気ぃ使わなくていいのに」
「涼太…」
「ん?」

「みきは…」

「ここにみきがいるの想像したらさ…」

思わず
涼太を抱きしめてしまった


少し古ぼけた
緑の剝げかかった建物
トタン屋根がついただけの屋外のブルペン
外野に大きなナイター照明

土の色は明稜と同じ

青藍とも南中とも

私たちの野球が始まった海岸のグラウンドと同じ

濃い茶色だった

ここから見えるホームに
つい思い浮かべてしまったみきの姿


味方じゃないみき

マスクの中で笑うみきの笑顔が大好き
だけどそれはもう
私の味方じゃない

対戦者としてベンチから見る時を想像すると
泣かずにいられなかった


11年続いた私たちの野球


涼太の野球にずっと私がいたように

みきのキャッチャーにも
ずっと私がいた

初めてマスクをつけた時も
初めてマウンドに立つ涼太と同じに
初めてホームに座る時も
涼太とみきの2人のサインを考える時も
ずっと私がいたのに



反対側のベンチにみきを見るのは

怖い


ホームからベンチに振り向くあの笑顔は
もうきっと

見れない




ブカブカのプロテクターに笑ったあの頃に
こんな日が来ることは

想像しなかった




終わりを現実的に描いたのは
これが初めてで

わかっていたのに
その画を描いてみるのは
ずっと避けていた


泣くのを我慢した涼太の顔が

過去と未来を

一瞬で描かせた

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コメント22

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  1. ユキさん(32歳)ID:5415200・10/15

    ミネットさん
    2人とも見たかったよね、みきの新しい舞台(´°ω°`)
    切ないあと楽しいけど
    奏さんはやっぱり切ないな〜って次アップしました!

  2. ユキさん(32歳)ID:5415198・10/15

    リンジーさん
    近大もライバルだね!
    町子とみきのバッテリー
    栄江&ヒロリンには勝てない?
    どっちだろ
    工業大もよっちとなおくんだしね〜
    それはそれでちょっと楽しみ!

  3. ユキさん(32歳)ID:5415192・10/15

    ルカさん
    不動のバッテリーがね(;∀;)
    でもみきの方がツライかな
    後藤とかなちゃん今まで通りで
    涼太はいないけど
    それを反対側から見てさ
    ああでもどうだろ
    みきはお父さんとも野球やりたいんだよね…
    みきヤバイね
    切ないやつだ!

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