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恋〜いつか出逢ったあなた〜

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2016/10/09 22:12:25

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「それで…どうして…うちに?」

あたしが少し小声で言うと。

「あいつ…歌は完璧なんだけど、どこか調子が悪いんじゃないかな。」

思いがけない言葉。

「…え?」

「急に歌うの止めたりするんだ。それもー…ふっ…と瞬きを止めるっつーか…動きも止まってさ。」

「……」

「なんて言ったらいいんだろ。んー…とにかく、おかしいんだ。」

今まで…千里にそんな事なんてなかった。

もしかして…あたしのせい?

毎日スタンプ送ってくれてたのに、返信しなかったし…

それ以前に、ハッキリした理由も言わないまま一ヶ月も別居して…

会いに行ったら行ったで…あんな別れ方したし…


「変な事聞くけどさ…」

里中さんは、少しだけ前のめりになると。

「神…精神的に病んだ事、あるかな。」

「え…?」

「いや、何となく…知ってる人と症状が似てたから…」

「……」

あたしは、あの日の事を思い出してた。

5年前…おじいさまが亡くなられた。

そして、その翌月…後を追われるように篠田さんも。

お二人ともご高齢だったし、苦しまずに逝かれたのがせめてもの救いなのだけど…

千里は、すごくショックを受けていた。

あたしの前では泣かなかったけど…

おじいさまのお屋敷で、一人…

おじいさまがいつも座ってらした椅子に深く沈み込んで、夕空を見てる千里には…

誰も声をかけられなかった。


その悲しみも…その寂しさも…

あたしは共有したかった。

なのに…

千里は、いつも一人でそれを抱えたまま、あたしには持たせてくれない。

あたしは…千里の心の中に入りたいのに。


「知花ちゃん…?」

「あ…っ、すいません……なんていうか…五年前に、身内を立て続けに亡くして…あの時は少し、殻に閉じこもった感じではありました。」

「ああ…そうなんだ…んー…最近、それを思い出させるような出来事でもあったのかな。何か様子がおかしいんだよなあ…」

「……」


それを聞いて…あたしは…

初めて。

すごく、後悔した。


検査に引っ掛かった事、どうして言わなかった。って。

千里は静かに怒ってた。

あたし…自分でも、あの時は…『明日は普通に来るものじゃないのかもしれない』って思ったクセに…

桐生院の父とおばあちゃまが亡くなった時も、あんなに悲しくて寂しい想いをしたのに。

そして…

おじいさまと篠田さんの死を、あれだけ悲しんでた千里を見てたのに。

なのに…

どうしてあたし、自分の勝手な想いで…千里に言わなかったの?

まるで、千里の言ったように、千里が何も話してくれないから。って…

それだけの理由みたいじゃない。


…バカだ。

あたし。


「…里中さん。」

「ん?」

「ありがとうございます。」

「……戻らせてくれる?」

里中さんが、少し優しい顔になった。

…あたしも、もうすぐ…この人に叱られる日が来る。

ううん…

叱らせない。

あたしは…


「とりあえず…会います。」

あたしがそう言うと、里中さんはホッとした顔になって。

「これで、F'sのライヴがますます楽しみになった。」

両手を上に伸ばして言った。

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