ジプシーのひとり旅

異文化の中で育ち成長してきた私の思い出話 〜 西アジア・ヨーロッパ・北米での生活。

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ジプシーと躁鬱

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2016/09/26 16:57:23

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私は、自信無く俯いたまま、フィリップ牧師に全てをモゾモゾと話した。

数日前に、ラマン先生から$100,000.-の小切手を貰ったことまで話して、私は大きく深呼吸した。

「この大金をどうするべきか悩んでいます」

当時、この10万米ドルは日本円にして、一千万円程だ。22歳を目前にして、一千万円の大金を手にした私は、喜ぶどころか困惑した。

フィリップ牧師は落ち着いた口調で話し始めた。
私はずっと俯いて聞いていた。
時より、頷き応答したが、牧師は私の耳に心地良い声で話し続けた。

そして、

「シア、貴女は、ここまでの過程で、その男性からどの様な印象を受けました?」

と問いた。

「嘘つきで汚い男と言う印象です」

と答えた。


牧師は、

「はい、そうですね。
と、言うことは、その$100,000.-は偽りのある汚いお金でしょうかね?
いや、決して偽小切手と言う意味ではないですよ…。
では、私は次を急ぐんでね。
此処で失礼するよ。

シア、貴女は良い医者になりますよ。信念を持ちなさい」

と言い、立ち上がった。

その時、私は顔を上げ、初めてフィリップ牧師の顔を見た。

優しい目をしていた。


私はガウンのポケットからラマン先生からの小切手とペンを出した。
そして小切手に"VOID"(破棄)と書き、丸めてポケットにしまった。


「フィリップ牧師、ありがとうございます!」

礼を言った私の声はハッキリとしたものだった。


フィリップ牧師はもう既にエレベーターに乗ってしまったのか、その場にはもういなかった。

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