あなたが大人になったら

持病を抱え、恋愛はしないと決めた。 あなたが大人になる、その時まで。

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2017/10/03 16:57:23

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「柊さーん。
柊さーん!診察室へどーぞー!


柊さーんっ!」





待合室に響く声に、ハッと我に返る。


「あ、は、はいっ。
すみません……。」


看護師さんが診察室のドアを押さえて待っていた。
私は背中を丸めて慌てて中へ入る。



(苗字が『柊』になったの、つい忘れちゃうよ……)



会社でも、他社との繋がりが多いことから
(名刺の差し替えや
アドレス変更やら手続きが多いので)
旧姓を使っていたのも大きかっただろう。
結婚して、苗字が変わったことの実感が薄かった。



看護師さんに頭を下げて、内診台の前に立つ。
看護師さんは扉をパタンと閉めた。姿は見えないが、奥から「準備をお願いします」と声がした。

私は準備を済ませ、内診台に腰掛ける。
カーテンで仕切られていて、奥に誰がいるのか分からないが、気配で先生が来たことが伝わった。



「柊さん、お仕事は落ち着いている?」




カーテン越しに、先生の声がする。
カチャカチャと音が響く。私は肩の力を抜こうと、フーッと息を吐いた。


「……そうですね、ハイ。
出張の予定もないですし、落ち着いていると思います。」



カーテンの向こう側で、先生と看護師さんの会話が聞こえる。私は不安と期待で頭が混乱しそうだった。
目を閉じて、もう一度フーッと息を吐いた。




「……えーっ、柊さん。」






先生の声にビクッとなりながら返事をする。
私の知りたかった結果が出るのだ。

手にも力が入る。
そんな雰囲気を察してか、先生の声が柔らかくなる。
優しい声で、話を続けた。








「柊さん。


おめでとうございます、妊娠していますね。」










叫んでしまいそうだった。
それをこらえて、飛び跳ねたい気持ちも押さえて、極力冷静に答える。




「そう、ですか……!


ありがとうございます…!!」




泣きそうになるのを必死でこらえていた。
泣くのはまだ早い。家に帰って、蒼太と一緒に泣こうとグッとこらえてた。





「……ただ、ですね。

まだハッキリとしたことは言えませんが。」





先生が言いにくそうに話を続ける。
私は有頂天のまま、先生の言葉に耳を傾けた。





「柊さん、


多胎妊娠の可能性があります。」








その言葉を聞いて、私は頭が真っ白になった。







「リスクの面も踏まえた上で、今後話し合いましょう。

次の検診のときに再度確認します。
とりあえずは、母子手帳を1冊貰ってきてください。


心臓の手術をしたのは〇〇病院?」







先生との話が遠くで聞こえる。
自分の話じゃないみたいだった。



………そうだ。
蒼太くんに言わなくちゃ。

喜んで、くれるよね………?






喜んでいいんだよね?

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